最近お気に入りのCD

インス:コンスタンティノープルの陥落 カムラン・インス『トルコの民族楽器と声楽のための協奏曲/交響曲第二番「コンスタンチノープルの陥落」/ピアノ協奏曲/赤外線のみ』
価格:¥ 1,250(税込)
発売日:2011-09-14

 1960年生まれのトルコ系アメリカ人作曲家。幼少期からアメリカとトルコを行き来しながら音楽を学び、長じた後も両国で音楽の教鞭をとるといった経歴の持ち主らしいです。
 しょっぱなの『トルコの民族楽器と声楽のための協奏曲』から、いきなり耳を奪われました。ドンドンと打ち鳴らされる太鼓(キョスやダウルも入っているのかな?)から始まり、そこをつんざくように高らかに絡むズルナ(管楽器)、そして吹き鳴らされる金管、木管、そこに重厚な弦のうねりが絡み……と、まるでメフテル(オスマン時代に端を発するトルコの軍楽)と伊福部昭が合体したかのようなカッコ良さ。
 作曲者本人のサイトで一部試聴ができますので、興味のある方は是非お試しあれ。こちら
『交響曲第二番「コンスタンチノープルの陥落」』も、民族楽器こそ使われていないものの、全体的の感触は似た感じで、やはりズシンと打ち鳴らされる打楽器と、つんざくような管の叫びが印象的。重々しくトラジックで、何ともハッタリの効いたドラマチックな曲調から、哀切で美しいメロウな楽章もあり、かなり視覚的な感じで楽しめます。
『赤外線のみ』は、かなりミニマル音楽寄りの作風ですが、それでもハッタリの効き具合は変わらず。今にも怪獣でも出てきそうな感じでガンガン攻めてくるので、聴いていて実に楽しい(笑)。

マルコプーロス:オルフェウスの典礼 ヤニス・マルコプーロス『オラトリオ「オルフェウスの典礼」〜古代オルフェウス教の詩に基づく』
価格:¥ 1,250(税込)
発売日:2009-03-25

 1939年生まれのギリシャ人作曲家による、1994年度作品。
 古代を思わせる平明でちょっと異教的なリリシズムと、頌歌のような荘厳さが合体した、不思議な清々しさのある大曲。
 ハープやフルートによるエキゾチックでシンプルなメロディや、儀式的なムードを醸し出す鳴り物をバックに、古代ギリシャの神々を讃える語り(この部分は英語)をブリッジにして、バリトン・ソロやソプラノ・ソロやクワイアによる神々への頌歌が、美麗なオーケストラをバックに、ギリシャ語で壮大に歌われるという構成。
 この頌歌部分が、何というかもう「真っ直ぐ!」という感じで、この魅力は何というんだろう……素朴とか牧歌的というのとも、ちょっと違うし……とにかく、ひたすら対象を讃えることで高みに昇っていくような、崇高ではあるんだけれど同時に軽やかでもあるというか……やはり牧歌的というのが近いのかなぁ……。
 とにかく、ロンゴスの『ダフニスとクロエー』を読んだときみたいな、何とも大らかで清々しい魅力があって、すっかり気に入ってしまいました。
 試聴はこちらで可能。

Voice of Komitas コミタス・ヴァルダペット『ザ・ヴォイス・オブ・コミタス・ヴァルダペット』
価格:¥ 1,657(税込)
発売日:1995-08-15

 アルメニア正教の聖職者にして音楽家であったコミタス(1869〜1935)が作曲した聖歌と、彼が収集・編曲したアルメニア民謡を、コミタス本人と(おそらく)弟子であるアルメナク・シャームラディアン(?)が歌っている、1912年の録音盤。
 最近ちょっと、このアルメニアン・クラシック音楽の父と言われている(……だそうです)、コミタスの音楽に凝っていまして、アレコレ色々と聴いているんですが、確かに室内楽曲なんかはクラシック的な雰囲気が濃厚なんですけど、ピアノ曲や歌曲なんかは全体的にとてもシンプルで、旋律のエキゾチックさや、ちょっと神秘的な雰囲気なんかもあったりして、グルジェフの音楽に通じるものがあるような気がしています。
 そんな中でもこの録音は、クラシック声楽家がコンサート・ピース風に歌い上げたり、後代の作曲家達が技巧的に編曲したものとはひと味違う、何というか生(き)の味わいがあるという感じで、個人的には最も魅力を感じた一枚。
 もちろん音質は決して良くはありませんが、それでもノイズリダクションは施されているし、何と言っても無伴奏で滔々と歌うコミタス本人の歌は、一種の崇高さを感じさせる美しさがありますし、シンプルなピアノ伴奏で朗々と歌い上げられるシャームラディアンの歌も、地声に近い力強さや素朴さなどもあって、クラシック声楽家の歌うそれとは、またひと味違う美しさ。
 試聴はここここでどうぞ。