“The Secret of Kells” (2009) Tomm Moore, Nora Twomey
(米盤Blu-rayで鑑賞→amazon.com)
2009年製作のフランス/ベルギー/アイルランド合作長編アニメーション。
ヴァイキングの略奪に晒されるアイルランドを舞台に、装飾写本『ケルズの書』の成立を絡めて、少年の冒険を描いたもの。
大阪ヨーロッパ映画祭、他で『ブレンダンとケルズの秘密』の邦題で上映あり。
主人公ブレンダンは、ヴァイキングの侵攻に備えて防壁を建設しているケルズに住む少年。
そこに侵攻を受けて滅ぼされたアイオナ島から、一人の彩飾者が未完成の装飾写本を携えて逃げてくる。ブレンダンは装飾写本に魅せられるが、少年の保護者でケルズの長は写本の価値を認めず、防壁こそ重要だと説く。
しかしブレンダンは保護者に背き、件の彩飾者のために顔料になる木の実を探そうと、初めて城壁から出て森に入り、そこで少女の姿をした妖精アイスリングに出会う。少年は彼女の助けで無事に木の実を手に入れることができるが、同時に森の奥に潜む邪悪な者の存在も知る。
ブレンダンはアイオナの彩飾者と共に装飾写本の作成に取りかかるが、長はそれを許そうとはしない。また写本作成に必要なクリスタルも喪われたままで、それを手に入れるには危険を冒す必要があった。
更にヴァイキングの軍勢も、刻々とケルズに迫りつつあり……といった内容。
まあ、とにかく目の御馳走。
華麗な色彩、装飾的な造型、大胆にフラットな画面構成は、アニメーションという「動く絵」の醍醐味をタップリ味わえます。もう、それ見ているだけでも満足できちゃうくらい、画面そのものが美しい。
大胆なデフォルメによるキャラクター造型も魅力的。
ストーリーは、魅力的で面白い要素も多々ありますが、いささか史実とファンタジーの板挟みになって、大胆に飛躍しきれていないきらいがあり。また、けっこうタイムスパンが長いストーリーの割りには、尺が75分しかないので、どうしてもディテール不足の感は否めず。
特にストーリーのフォーカスが、写本の完成、ヴァイキングの侵攻、クリスタルの探求……と、あちこち散ってしまっているのが残念。ここはもうちょっと、ポイントを絞り込んで見せた方が良かったのでは。
ただ、主人公の少年と妖精の少女が交流するあたりのキャラクタードラマは、何とも生き生きしていて実に魅力的。
そういう感じで、あちこち惜しい感もなきにしもあらずではありますが、映像の美しさだけでも、それを補って充分に余りあるほど。《動く絵の美しさ》を、これだけタップリ味わわせてくれるなら、それ意外にアレコレないものねだりをするのは贅沢かも。
そのくらい映像はパーフェクトに美しく、また、トラッドベースの音楽も素晴らしい。
眼福でした。
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