選挙の前に考えておきたいこと

 今朝ツイッターで、自民党の日本国憲法改正草案に始まる諸々について、主にLGBT視点からの所感をツイートしたので、補足を交えてそれをまとめておきます。

 ここにあるQ&Aとは、『日本国憲法改正草案 Q&A/自由民主党 (PDF)』のことです。以下、該当部分を引用。

 また、権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で徐々に生成されてきたものです。し たがって、人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だ と考えます。現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると 思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました。(Q13)

 そして私の所感。

 現在のアフリカの話については、情報が周知されているとは言えないので、参考としてカメルーンナイジェリアウガンダの実例を挙げておきます。そしてもう1つ、サンクトペテルブルグのLGBTオープン化禁止から活性化している現在のロシアの状況も。
 以上を踏まえての拙ツイート。

 上記記事の参考リンク→レインボープライド愛媛(性的マイノリティ政策アンケート
 そして併せてこちらも→毎日新聞/衆院選:ジェンダー政策 各党の違い浮き彫り(『性的マイノリティーへの差別・社会的排除をなくす』については、自民のみ『どちらかといえば反対』と回答)
 そして、なぜ現状の差別や人権侵害の有無だけではなく、将来的な展望も含めて考える必要があるかという意味でツイートしたのが、こちら。


【追記】ブログ人サービス終了に伴い、上記ツイート中のリンクは切れています。現在のリンクはこちら→https://www.tagame.org/jblog/?p=1753


 なぜ「起こってからでは遅い」と強調しているかというと、前述の拙ブログ記事「『タブウ』およびヴァルター・シュピース追補」後段に、詳しく理由が書いてありますが、それに対抗しうる政治力を日本のLGBTは持っていないからです。
 先ほどのツイートに対していただいたご意見の1つ。

 これに関しては、前出の『自民党憲法草案の条文解説』からの、以下の引用をご参考に。

1 憲法とはなんだったのか
 憲法は、法律ではありません。近代憲法は、国家権力を制限し人権を保障する法、要するに国民が国家に遵守させる法と考えられてきました(それを立憲主義というのが一般です)。少なくとも日本国憲法はそうなっています。
 今回の草案は、そうした従来の意味での憲法ではありません(そのことについてどう考えるかは自由です)。
 つまり、国民が憲法尊重義務を負い(102条1項)、人権衝突とは別個の概念である「公益又は公の秩序」(12条後段、13条後段、21条2項等)による人権制限が正当化され、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚」(12条後段)することが要求され、前文冒頭の主語が国家になっているなど、国家から国民への法へと変容を遂げているのです。

 再び、私の所感です。

 繰り返しますが「現状ではどうこう」ということではありません。現状のことであれば現実問題として、具体的な対処を色々と考えるべきでしょう。
 そうではなく、将来的にどういった思想に基づいた政治が運用されていく可能性があるのか、そこを考えることが重要だと思います。
 例えば、いささか乱暴かもしれませんが、この自民党による日本国憲法改正草案によれば、前述したロシアで起きている「ゲイのオープン化(権利を公に主張したり、可視化のためのパレード等を行うこと)を禁止する」ことは、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」(第二十一条抜粋)として正当化されるわけですから。
 もう1つ、前出のHuman Rights Watchの声明に見られる、石原慎太郎の発言「テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。日本は野放図になり過ぎている」は、ロシアの「ゲイのオープン化禁止」と同じ発想であり、そういう人物が「憲法改正で自民に協力も」と発言していることにも注意しておきたい。
 以上、選挙権をお持ちのLGBTの皆さん(そしてもちろんLGBT問題に感心のあるヘテロの皆さん)には、こういったことを是非ご一考願えればと思います。