“Vampires: Brighter in Darkness” (2011) Jason Davitt
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com、イギリス盤もあり→amazon.co.uk)
2011年制作のイギリス製テレフィーチャー。マッチョ系ゲイ・ヴァンパイアもので、いちおうシリーズ化の予定らしく、続編は”Vampires: Lucas Rising”となる模様。
どんな内容かというと、一言で言えば……すっげー中二病でした(笑)。
紀元500頃、古代ローマの軍人ルーカスは仲間と共に、永遠の命を求めて東欧の某所を訪れる。そしてそこでヴァンパイアの女王と出会い、首尾良く自分もヴァンパイアになる。
それから1500年後、イギリスに住むゲイの青年トビー(美味しそうな身体+タトゥーの、犬系カワイコちゃん、ヒゲ付き)は、姉のシャーロットが仕掛けたブラインド・デートに出掛けるが、その相手がヴァンパイアのルーカス(ハンサム&ノーブル系、ちとワイルド、身体良し、ヒゲ付き)だった。
トビーは自分のためにレストランを丸ごと貸し切りにしたルーカスにちょっと引きつつ、それでも彼に惹かれるが、「ホテルの部屋に来ないか」というお誘いは、今日のところは淑女らしくお断りする(ゲイだったら、ここは直行すると思うけどw)。
またの再会を約束してルーカスと別れたトビーだったが、自宅の前まできたところに、シュッと目にもとまらぬ早業でルーカスが現れる。どうしてここにいるのとうろたえるトビーに、文字通り目を光らせて「君が好きだ、中に入れてくれ」と迫るルーカス。
催眠術にかかったように(って実際に術にかかってるわけですが)ルーカスを家に入れてしまうトビー。そこでまた目を光らせてトビーに迫るルーカス。最初は嫌々していたトビーも「俺が欲しいんだろ?」と迫られ、結局「欲しい」と返事。お互いのシャツを激しく剥ぎ合い、ソファーに倒れ込み、荒々しく互いの身体をまさぐるうちに、ルーカスが「シャーッ!」と牙を剥きだして、トビーの首筋にガブリ。哀れ血を吸われて意識朦朧となるトビー。
そこにドアを激しく叩く音。何とそこには、もう一人のルーカスがいた! どーゆーこと???
実はトビーの血を吸っていたのは、ルーカスに化けた仲間の吸血鬼アンソニーだったのだ! 玄関で「僕を招きいれてくれ、トビー!」と叫ぶルーカス。朦朧としながら「入っていいよ」と答えるトビー。途端、ルーカスは部屋内に突入、トビーからアンソニーを引きはがす。
しかし血を吸われたトビーは哀れ虫の息。そんなトビーの命を助けるために、ルーカスは自分の血を飲ませる。邪魔をされたアンソニーは逃走。やがて意識が戻ってパニックるトビーに、ルーカスは全て説明する(…ってもヴァンパイアの血を飲めば、その主のライフ・ヒストリーが判るという便利な設定なんですがw)
トビーは自分がヴァンパイアになっちゃったことにショックを受けるが、でもまあルーカスのことを愛しているし(いつから???)すぐ興奮して牙出して「シャーッ!」ってやっちゃうけど、でも空中浮揚とかもできるようになったし、これはこれで悪くないかな、と納得(いいのか?)。
というわけで、二人はもっとカジュアルでオシャレな服に着替えて(さすがゲイ)、夜の街にデートに繰り出す。デートといってもゲイクラブに行くとかじゃなく、超人的な身体能力を活かして屋根の上をピョンピョン、満月の下でロマンティックにキスといった塩梅。
しかしその頃、ルーカスが仲間の承諾なしに勝手にトビーをヴァンパイアにしたことを、アンソニーやもう一人の仲間マーカスは問題視していた。更に彼らヴァンパイアの元祖である女王は、地獄(だか何だか)の扉を開けて、世界を破滅させヴァンパイア天国にしようとしていた!
ここはお約束通り、世界破滅計画には荷担しないことにしたルーカス。ヴァンパイアの女王は招集を拒否したルーカスを裏切り者と決定。一方トビーは、ヴァンパイア化して数時間にも関わらず、恐るべき潜在能力を発揮。
果たして世界は滅亡から救われるのか? ……ってな内容。
実はこの後まだまだ、ルーカスが飛行機の屋根に乗ってエジプトへ行き、古代エジプトの元祖ヴァンパイア(神殿に鎮座しアヌビス神を侍らせながらも、なぜかイヤホンでヒップホップを聴いているというモダンっ子)に指導を仰ぎに行くとか、トビーの元彼が彼のことを忘れられず、家に強引に押しかけたときにアンソニーに攫われてしまい、そして結局その元彼もヴァンパイア化し、クライマックス直前あたりでは、もうゲイのヴァンパイアたちの痴話喧嘩の様相を呈してきたり、何の伏線もなく「古の錬金術師が作った《生きていて血を滴らせる石・ブラッドストーン》」だの、強大な力を持つ偉大な魔女だの、女神ヘカテだの、巨大サソリだの、トビーとルーカス危機一髪の時に唐突に昔なじみのサキュバスが現れて加勢するだの、もうトンデモ展開の目白押し(笑)。
そんなこんなでツッコミ出すときりがない、全編通じて中2病フルスロットル!
もちろん「実は××が巨大な力を秘めていて、後になって覚醒する」という定番展開なんかももありましてよ!
いやぁ、笑った笑った(笑)
とはいえ、なんか作り手の《愛と情熱》を激しく感じるので、ひどい出来っちゃあそうなんだけど、個人的にはかなり好きです。低予算なのは丸わかりだけど、でもその中で頑張っているのは伝わってくるし。
あと男優陣(基本的に全員ヴァンパイア)が、なかなか上玉を揃えていて、演技力はともかくルックは全員悪くない。ちゃんとトビーは可愛く、ルーカスは格好良く見えるし、体育会系のアンソニーもなかなか。
反面、女優はひどいんですけど(笑)。やっぱゲイが作ってるから、女はどうでもいいのかしら(笑)。
ゲイ的にセクシーなシーンだと、トビーとルーカスが一緒にシャワーを浴びながら、互いにガブガブ噛み合い(笑)、肌を伝う血を舐め合うなんてのは、けっこう上手く撮られていて、あー基本的にはここが撮りたかったんだろうなぁという感じ。だったら下手な色気ださずに、もっとこぢんまりした話にすりゃいいのに……という気もしますが(笑)。ヴァンパイアの女王の世界征服のせいで、話がシッチャカメッチャカになっちゃってるので(笑)。
あと、とにかく考えなし&唐突に話がどんどん進んでいくので、2時間もあるのに余分なことをしている余裕がなく、結果的に展開が早くなっているのも佳良。正直、演出自体(撮影もね)はへっっったくそなんだけど、でも飽きはしないという。
特撮系も、この手の作品にしては頑張っている方で、クリーチャーも何種類か出てくるし(とはいっても俳優と絡んでアクションとかは殆どないんですが)、デジタル合成なんかも駆使していたり。
まぁ、牙が突き出たヴァンパイヤ入れ歯のせいで、役者さんの滑舌が悪くなっちゃって、なんか喋りがモゴモゴしてヒアリングするのが大変だったとか、あと何かっつーとヴァンパイア同士が、その牙を剥き出して「シャーッ!」「シャーッ!」と威嚇し合うのが、なんかネコの喧嘩を見てるみたいで、その度に笑っちゃったりはするんですけど(笑)。
というわけで、作品の出来自体は決して褒められたもんではないにも関わらず、それでも変なDVDスルー映画やVシネの「たりぃ〜、まだやってんの〜、さっさと終わんねぇかな〜」とは無縁で、ぶっちゃけ個人的にはかなり楽しめました。続編を作る気マンマンで、唐突に《引き》で終わるラストも爆笑だったし(笑)。
そんなこんなで、好きだわぁ、これ! でも、トラッシュ趣味のない相棒は、横で退屈して居眠りこいてましたし、万人にはオススメいたしかねますが、予告編でピンときた人なら、タップリ楽しめるはずです。