“7 kocali Hürmüz”

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“7 kocali Hürmüz” (2009) Ezel Akay
(トルコ盤DVDで鑑賞、米アマゾンで入手可能→amazon.com

 2009年のトルコ映画。まだ若くて美しい未亡人イュルムズと、その後添えである7人の夫を巡って巻き起こる騒動を描いた、カラフルなミュージカル・コメディ。
 トルコでは有名な作品のリメイクらしいです。

 オスマン時代のイスタンブール。
 パシャ(高官)の未亡人である美女イュルムズは、夫の残した豪邸に暮らしつつ、お金のために5人の男(床屋、夜警、軍人…出征中、綿紡ぎ、強盗…服役中)と結婚しており、さらにもう一人、船長とも結婚するところだった。
 彼女は夫たちに会う日を、それぞれ曜日ごとに決めており、また夫ごとに自分のことを、パシャの未亡人だとかパシャの娘だとかパシャの屋敷の女中だとか、異なる説明をしているので、男たちは皆イュルムズの夫は自分一人だと思い込んでいる。
 そんな中イュルムズは、若くてハンサムな医者と出会って一目惚れしてしまう。そして医者の方も、彼女の誘惑に一発で参ってしまう。彼女の友人で、秘密を分かち合う片棒でもあるお見合い斡旋の女は、イュルムズの恋に協力して、医者との結婚のために6人の夫との関係を清算することにする。
 彼女たちはパシャの身代わりを立てたりして、上手く医者との結婚話を纏めるが、そんな中、服役中だった盗賊の夫が脱獄し、また田舎住まいの綿紡ぎの夫も上京、しかも皆が床屋の夫のところでヒゲを整えるものだから「いったいあの家には何人のイュルムズがいるんだ」ということになってしまう。
 こうして、新しい医者の夫を屋敷に迎えた晩に、6人の夫が入れ替わりたちかわりやってくるのでイュルムズはテンテコマイ。更に綿紡ぎの夫のもう一人の妻も加わって、騒ぎはますます大きくなり……といった内容。

 小咄的な艶笑譚を、カラフルで独創的な衣装や、人工的に作り込んだオールセットの中で、歌と踊りとコント的な笑いを交えながら繰り広げる、肩の凝らないコメディ作品ですが、とにかく衣装やセットの凝り具合が良く、それを見ているだけでもタップリ楽しめます。
 内容的には、最初に出てくるセリフが「夫なんて仕事から帰ってくると丸太みたいに寝てるだけで何の役に立つの?」「昔の強い男を満足させるには妻は4人でも足りなかったけど、今の弱い男じゃ4人かかっても妻を満足させられない」といった具合で、完全に男のダメさを笑い飛ばすタイプのコメディ。
 イュルムズの恋の相手となるハンサムな医師も、いちおう最初はロマンティックに描かれるんだけれど、それでも結局は「女から見た男のしょうもなさ」というところからは逃れられず、結果的に「そんな男たちを操る女の生き様バンザイ」みたいな後味になるのが、なかなか新鮮。
 これはきっと、男性社会で鬱憤の溜まる女性からすると快哉を叫びたくなる話だろうし、イュルムズ役の女優さんもすこぶる付きの美人さんなので、男性から見ても「この美女になら騙されても仕方ないか……」という感じになるだろうから、元々は有名な作品だというのも納得。
 まぁコメディとしては、会話主体のコント的なものなので、私の語学力の足りなさもあって、そう爆笑という感じではなかったです。あちこちクスクス笑えるくらい。また、下痢で何度もトイレに駆け込むとか、床屋の吃音で笑いを取るとか、笑いのテイスト自体が、けっこうコテコテ系。

 とはいえ前述したように、とにかく衣装やメイク、セットといった美術が楽しい。あともちろん、ミュージカル好きならお楽しみどころもいっぱい。
 千夜一夜やカンタベリーからエロスを抜いて、キャッチーな歌とカラフルな美術で、オシャレでポップに仕上げたような作品で、ラスト、全て丸く収まった後に女たちが「でも、5つなんて足りない、7つでもまだまだ、10でも100でもまだまだ欲しい!」と歌い踊るミュージカル・シーンなんかは、個人的にかなりオカマ心を擽られました(笑)。
 予告編。

 女だけのハマム・パーティで「男どもにはナイショよ」と言いながら、「夫なんて犬猫みたいに天からいくらでも降ってくる」と歌い踊るミュージカル・シーン。

 ミュージカル・シーンのハイライト。イュルムズの六人目の夫となる冴えない船長を囲んで女たちが歌い踊る場面や、綿紡ぎの夫の歌、ハマム・パーティ、ラストの「10でも100でもまだまだ欲しい!」などなど。