10月8日、飛行機でパリからベルリンへ移動。
なんでベルリンにも行くことになったかというと、同地に拠点を置いて、ゲイ・アート関係の書籍やゲイ・トラベル・ガイドなどを、全世界向けに出している出版社Bruno Gmünder(ゲイ・アート画集や写真集の洋書を買う習慣のある人間にはお馴染みの名前なはず)から、私の英語版単行本第二弾を、今年の12月上旬に出すことになっていたから。
そのために春頃から担当エディター氏と、あれこれやりとりを続けていたんですが、「パリ個展でフランスに行くので、もし来られるようだったら来てね」と案内を出したところ、逆に「移動や宿泊の費用は持つから、ベルリンに来ない?」と誘われたので、あ、それもいいなとホクホク乗った次第。
なにしろ私、ドイツに行ったのは30年くらい前に一度きりで、そのときはまだ《西ドイツ》だったし(笑)、しかもベルリンには行ったことがなかったので。
ベルリンのテーゲル空港で、担当エディターのセミョン(Simeonなので、メールをやりとりしてたときはフツーにシメオンと読んでいたんですが、現地で聞いたらセミョンに近かった)がお出迎え。挨拶した後、バスと地下鉄を乗り継いで、まずホテルにチェックイン。
ホテルの名前がAbba Hotelで、最初は「あのABBA」とは関係なく、単に綴りが同じで別の意味があるドイツ語か何かだろう……と思っていたら、1Fのレストランの名前が「アッバ・ミーア」だったので、どうやら本当に「あのABBA」だったみたい(笑)。いわゆるゲイ・ホテルではありませんが、LGBTフレンドリー・ホテルということで、ロビーにはベルリン・ゲイ・ガイドのフリーペーパーなんかが置いてあるし、全体の雰囲気はモダンを主体に程よくデコレーションが入った感じで、部屋は広いわ綺麗だわで実に快適な良いホテル。
シャワーなんぞを浴びて、ちょっと休憩した後、セミョンの案内でベルリン観光へ。
バスと地下鉄(っても地下から乗ったかと思いきや、途中から地上に出て高架になったり、また潜ったり、出たり入ったりするんですが)と市電をフルに駆使して、主だった名所旧跡エトセトラを次々と。ガイドブックに乗っている系の場所は、一通りこの一日でクリアしたんじゃなかろうか。おかげで、最後の頃はもうクタクタに(笑)。
というわけで、ゲイ&レズビアン・ホロコースト・メモリアルで撮った写真が、こちら。
ここに限らず名所旧跡を巡っていると、どうしてもナチスや東西分断絡みのものが多いので、けっこうダウナーな気分になってきます。
夜はセミョンに「チケットが一枚あまっているから」と誘われて、James Blakeのコンサートへ。
音楽やパフォーマンス自体は良かったんですが、昼間の疲れでけっこう体力的にキツくなってきて、オマケに前座のDJも一時間以上あったり、ライトの演出がアグレッシブで目をやられたり、爆音&重低音で耳もやられたり……で、最後の方は正直「そろそろ終わってくれないかしらん」とか思ったり(笑)。
翌9日は、夕方まではオフだったので、前日にあちこち見た中で、もっと良く見たかった所などへ行ってみることに。
この写真は、戦禍で半壊したままの姿を残している、カイザー・ヴィルヘルム教会内部のモザイク画。すっごい綺麗。
それからヘルムート・ニュートン財団写真美術館に行ったり、いろいろブラブラと。
夕方になり、セミョンと待ち合わせて、ゲイバーのハッピーアワーへ。そこでBruno Gmünderの他のスタッフにも紹介される。
下の写真は左から、同社が出しているゲイ雑誌MÄNNERの編集者クリスチャン(後日、彼からインタビュー取材を受ける)、私の担当編集者セミョン、名前忘れたけど同社のデザイナー氏、セミョンの上役ミーシャ。
バー自体は激混みで、景色もなかなか良かった(いい男もいっぱいいた、という意味)んですが、やはりオール出版関係者というのがネックなのか、ここだけ切り出すとなんかオタクっぽい感じ(笑)。
当然のことながら、私が加わってもそのオタクっぽさは全く変わらず(笑)。
バーの後は、Bruno Gmünderのオフィスがその近くだと言うので、もう営業は終了していたけれども行ってみることに。
セミョンとミーシャが、鍵を開けて電気を付けて、オフィス内を説明しながら案内してくれる。案内してくれる、と言ったとおり、広い。スタッフ(デスクの数)も多い。セクションも細かく分かれていて、日本のゲイ出版では考えられない規模。
社員は40名くらいって言っていたかな?(ちょっとウロ覚え)全てゲイ男性のみだそうです。たまに女性社員も入るんだけど、長続きしないんですって。そんなものかしらん(笑)。
翌10日。午後から前述のインタビュー&その他もろもろ打ち合わせなので、午前中はフリータイム。またあちこち見物に出掛ける。
下の写真二点は、映画『ベルリン・天使の詩』でもお馴染みの、戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ)基部のレリーフ。バトルとキス。
余談ですが、初日にセミョンは私を案内しながら、「ここは『ラン・ローラ・ラン』に出てきた云々」「ここは『クリスチーネ・F』に云々」と、あれこれ説明してくれました。
午後からはBruno Gmünderのオフィスに行って、まずMÄNNER誌のインタビュー。
そんな予感はしていたんだけれど、インタビューの受け答えは全て英語。大丈夫かな〜と、自分でも不安だったけれど、質問の意味が分からなくなることも、自分の答えが伝わらなくなることもなく、何とかクリア。まぁどうせ、最終的にはドイツ語になるわけで、どんなメチャクチャな英語でも、そう大事にはなるまい(笑)。
続けて、セミョンとミーシャと3人で、現在進行中の英語版単行本に関する諸確認やら、今後のアレコレについてミーティング。いろいろ興味深いプランも聞けたので、そのうち時が来たらまたお知らせできるかも。
そこに同社CEO氏がやってきて、ご挨拶。私が同社の社名を「ブルーノ・グミュンダー」と言ったら、「アメリカ人とかは、その発音でいつもトラブルのに!」と喜ばれました(笑)。そのまま雑談していると、電子書籍の話題になり、洋の東西を問わずアダルトものの電子書籍には、同じ問題があることが判る。
CEO氏から「うちの本は日本でも売られている?」と聞かれたので、正直に「残念ながら書店で見かけることはほとんどないし、アマゾンでも取り扱っていない」と答えたら、「やっぱりね〜」とガッカリされました。何でも以前は日本のディストリビューターと契約して配本もあったんだけれど、トラブルがあって以降(もちろん日本の性器の露出エトセトラに関する問題)ルートがない様子。
同社としては、日本や東アジアのゲイ・マーケットも視野に入れたいのに、残念という感じでした。
打ち合わせ諸々が終わったところで、私の単行本の本文レイアウト作業中のデザイナー氏に紹介されて挨拶したり、SNS用に写真を撮られたり。
下の写真は、イタリアのアーティストFranzeの、まだ発売前の新作グラフィック・ノベル”Poseidon- T”を貰って喜ぶ私。
内容は、ラグビーのスター選手に憧れるゲイ青年が、不意に起きたカタストロフに巻き込まれ、『クローバーフィールド』か『パシフィック・リム』かってな展開になるゲイ・ラブ・ストーリー。ゲイラブありハグありキスあり添い寝あり、セミヌードありフルヌードあり、触手あり巨大ロボットあり……だけどセックス場面なし! という異色作。
しかもそれが最後には、身の丈サイズのリアルなゲイの心情やゲイ的なテーマを描いた作品として、綺麗に後味良く収束するという、なかなかのものでした。Franzeの前作(Andreと組んだ”Black Wade”)も、ゲイ版ヒストリカル・ハーレクインみたいな感じで良かったですが、テーマ性やユニークさという点は”Poseidon-T”に軍配。
作者自ら作ったPVもあるので、よろしかったらご覧じろ。
長くなったので、とりあえずここまで。