“The Painting (Le Tableau)” (2011) ジャン=フランソワ・ラギオニ

Blu-ray:ThePainting
“The Painting” (2011) Jean-François Laguionie
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 2011年のフランス/ベルギー製長編アニメーション映画。ジャン=フランソワ・ラギオニ監督。原題”Le Tableau”。
 絵画の中の世界をメタ的な手法も交えながら描いた、娯楽性豊かな大作。

 森に囲まれた古城を描いた一枚の絵。しかしその絵は未完のまま放置されたために、絵の中の世界では、完全に描き上げられた人物たちと、まだ色が途中までしか付いていない者、そしてラフな線画のデッサンどまりの人々といった具合に、階級社会が出来てしまっていた。
 完成品たちは夜な夜な古城で宴会を繰り広げ、描きかけたちは森の粗末な小屋に追いやられ、デッサンたちは不可触賤民のような扱いを受けている。
 そんな中、完成品のラモは描きかけのクレアと、禁じられた恋に落ちる。こうして城を追われたラモは、クレアの友人でやはり描きかけのローラ、仲間を酷い目に合わされたデッサンのプルームと一緒に、絵を完成させてもらうために、自分たちを描いた画家を探しに行くのだが……といった内容。

 まず、アイデアがユニーク。そしてそのアイデアを元に、絵の中の世界、絵の外の世界、他の絵の世界など、舞台を様々に横断しながら、プロットとテーマを膨らませていく、その工夫具合もお見事。ラストのオチも唸らされる。
 映像的には、基本的に絵画の中の世界ということで、筆のタッチなどを重視した美術全般に魅せられる。それと現実世界の対比も見事。キャラクター・アニメーションには3DCGを用いているものの、テクスチャーを上手く用いているので、さほど違和感もなし。
 このキャラクター・アニメーションに関しては、この監督の短編集が日本盤DVDで出ているので、それらのアナログな作品と比較してしまうと、いささかアニメーション的な滋味に劣ることは否めないけれど、反面ダイナミズムや娯楽性を獲得しているという利点もあり、全体として見ると、この選択は正解だという印象。
 そういった娯楽映画的なダイナミズムも、作品の大きな魅力となっており、とにかくストーリーが面白い。ユニークなアイデアとメタ構造を活かした作劇に、アクションやユーモアがふんだんに加わった結果、先が読めない面白さと作品的な深みが、上手いバランスで同居しているという感じ。
 加えて前述した美術の見事さ。繊細な色彩設計による美麗画面、二次元の絵画を三次元的に横断していく絵作りの面白さなど、もう全編通して目の御馳走。フランス近代を思わせる音楽も素晴らしかった。

 というわけで、「独創的で、綺麗で、面白い」という、三拍子揃った一本。メタ的な構造を上手く活かした面白さや、作品としての完成度の高さ、そして豊かな娯楽性という点では、作風は全く異なるものの、『LEGO®ムービー』に通じるものもある感じ。
 アニメーション好きなら、オススメの一本です。

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