“Mixed Kebab” (2012) Guy Lee Thys

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“Mixed Kebab” (2012) Guy Lee Thys
(英盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk、日本のアマゾンでもマーケットプレイスで取り扱いあり)

 2012年のベルギー/トルコ製ゲイ映画。
 アントワープに住むトルコ系クローゼット・ゲイ男性と、フラマン語系ベルギー青年との恋愛を描きながら、それを通じて、同時に社会が抱える様々な問題も描きだすという内容。

 主人公イブラヒムはベルギーで生まれ育ったトルコ系の青年。自分がゲイだと自覚はしているが、それを表に出すことはなく、名前もベルギー風にブラムと名乗っている。パートタイムのウェイターをしながら、裏ではコカインの売人もし、行きつけのダイナーの一人息子、ケヴィンに惹かれている。
 ケヴィンは、ダイナーの主である母親マリアナと二人暮らし。息子がゲイなのを承知しているマリアナは、ブラムがゲイでケヴィンを好きだというのを見抜き、気を利かせて二人を一緒に夜遊びに行かせる。
 ケヴィンはブラムに「男と女とどっちが好き?」と尋ねるが、ブラムは「自分はトルコに親が決めた婚約者がいて、じきに結婚する予定だ」と答える。一方、ブラムの弟で学校から落ちこぼれてストリートギャングになっているフルカンが、マリアナの店に強盗に入る。
 やがてブラムは、婚約者であり従妹でもあるエリフと、結婚の書類を交わすためにトルコへ行くことになる。ブラムは「一緒に行こう」とケヴィンを誘い、一度は「仕事があるから」と断ったケヴィンも、マリアナに後押しされてブラムと一緒にトルコへ行く。
 トルコでは、エリフに恋する地元の若者ユスフが彼女を口説いているが、彼女は男尊女卑のトルコ社会にうんざりしており、ブラムと結婚してベルギーに行くのを望んでいる。トルコに到着したブラムとケヴィンは、一緒にホテルの同じ部屋に宿をとるが、そのホテルはユスフの職場でもあった。
 一方ベルギーでは、チンピラを仕切るルーマニア人ギャングの裏切りによって、フルカンがダイナーの強盗事件について警察の取り調べを受ける。父親に殴られたのと、警察署内でのアクシデントで、顔に傷を作って警察署から出てきたフルカンは、近くのモスクを拠点とするムスリムの男に声を掛けられる。フルカンは誘われるまま男と一緒にモスクに行き、そこでイスラムの教えを受けるうちに、次第にイスラム原理主義へと傾倒していく。
 一方、トルコのブラムとケヴィンは、次第に関係が接近していき、ついにホテルのハマムで結ばれるのだが、それをユスフに見られてしまい……といった内容。

「ケバブ盛り合わせ」というタイトル通り、まぁとにかく盛り沢山な内容。
 ストーリーはこれでもまだ中盤くらいで、ブラムのゲイばれだの、ケヴィンとの関係だの、家族問題だの、マイノリティ問題だの、名誉問題など……と、色々なエピソードが山のように続く。
 それと同時に、ベルギーにおける移民問題とか、その移民というマイノリティの中で、さらにマイノリティ差別があるとか、ムスリム・コミュニティ内での原理派と世俗派の問題とか、ベルギーのトルコ系コミュニティ内での、身内にLGBTがいる家族への差別とか、とにかく盛り沢山な内容。
 で、そういった諸々は実に興味深いんですが、いかんせんそれだけ盛り沢山で、しかし尺は1時間半強なので、どうも1つ1つが点景でしかなく、それを掘り下げていく方向にはいかないのが、少し残念。
 また人間ドラマの方も、《トルコ系ベルギー人でクローゼット・ゲイで女性との結婚も間近だけどベルギー青年に恋をしてアイデンティティの置き場に彷徨いマイノリティ差別にも会っている男》という主人公だけとっても、キャラとしては充分以上に複雑で盛り沢山。
 そこに更に、《常に兄と比較され学校ではレイシストからいじめられストリートギャングになりやがてイスラム原理主義に傾倒する弟》とか、《初子は生後すぐに死んでしまい次の子を長子として大事にしてきたがゲイだと判って受け入れられない父親》とか、とにかく全員、それ一つで映画一本作れそうなくらいキャラ設定が複雑。
 基本的に、描写やディテールで見せるのではなく、ストーリーを追わせるタイプの作りなので、内容自体は面白いし、因果関係などを良く考えてストーリーが作られているのも判るんだけど、前述したような盛り沢山さ故に、どうしても、どれもこれも描き込み不足という気がしてしまう。
 ただ、まったく予定調和的ではないストーリーの結末なども踏まえると、目指しているのはストーリーやドラマを描くことではなく、それらを並べて見せることで、主人公とその周囲の世界の諸相を見せることにありそうな感じ。
 そうなると、もう少しキャラクターを突き放した、高い視点から描いた方が良いと思うんだけど、いかんせん、大きな軸であるゲイ・ロマンス部分が、ここは普通にムーディ&センチメンタル(&エロス)に描かれるので、そこいらへんがぎくしゃくしてくる。

 というわけで、ストーリーは(いささか作りすぎな感はあるものの)面白いし、ちょっとしたエピソードにも背景となる社会問題が盛り込まれ、そんなテンコモリ具合から感じられる意欲は良しですが、それ故からくる、あちこち物足りない部分もあり……という感じの一本。
 とは言え、ゲイ・ロマンスに社会問題をこれだけ盛り込んだゲイ映画というのは、なかなか珍しいと思いますし、ゲイ的な部分でも社会問題的な部分でも、見ていて色々と思わされる部分は多々あるので、テーマやシチュエーションに興味のある方なら、色々と楽しめると思います。

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パリ紀行(2)〜サイン会編

11月7日(土)

 昨夜の疲れもあって朝寝坊。
 朝食は簡単にパンとチーズで。

 昼はオリヴィエも一緒にケヴィンとランチの約束なので、徒歩でマレ地区へ。
 待ち合わせの店が、以前にも行ったことのある中華料理屋だったので、ちょっとげんなり……というのもこの店、値段が安いのはいいんだけど、味が決して良いとは言えないので(笑)。
 そうこうする間に、ケヴィンも到着。昨日のオープニングでも会った、彼の奴隷とそのパピーも一緒。
 この三人の関係がちょっと面白く、この奴隷氏とパピーはそもそも《マスター/飼い犬》という関係のカップルだったところを、ケヴィンがその《マスター》を《奴隷》に目覚めさせてしまった……ということらしい。マンガのネタになりそうである。

 ランチの後、店を変えてコーヒーを飲んでいたら、オリヴィエの携帯にサイン会をする書店から連絡があり、一つ問題が発覚。
 というのも、サイン会の時間は午後三時〜四時半の予定で、フライヤーにもFacebookのイベントページにも、ちゃんとそう表記されている。にも関わらず、書店が何を勘違いしたのか、開始時間を午後二時からと記載した貼り紙を、ショーウィンドウに貼ってしまっていたのだ。
 結果、本来の開始時間までまだ一時間あるというのに、その貼り紙を信じたファンが既に店の前に行列を作っていると。仕方ないのでコーヒーもそこそこに切り上げて、書店へと移動。
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 書店Les Mots a la Boucheに到着。店の前に行列しているファンに「遅くなってゴメンね〜」と声を掛け、店内に入ってサイン会がスタートしたのは、およそ二時半。
 問題の貼り紙。やっぱ「二時から」になっている。むむむ。
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 この書店でサイン会をするのはもう四回目。手順は判っているので、入り口脇にセッティングされたテーブルについて、さくっとサイン会開始。
 スペリング確認用に、各々紙に名前を書いて貰い、本にサインを入れていく。
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 昨日の記事にも書いたように、Bruno Gmünderからの英語版新刊”The Contracts of the Fall”の初売り先行発売(正式発売日は12月1日)なので、やはりそれを購入していく人が一番多い。それ以外は、仏語版だと『軍次』『君よ知るや南の獄』『ウィルトゥース』、英語版だと”Passion”、日本語版だと『弟の夫(1)』持参の人が目立つ感じ。

 シメオンが撮ってくれた、店の外の動画。彼が到着したのは三時以降なので、その頃の光景かな?

Posted by 田亀 源五郎 on 2015年11月12日

 オープニングのときも感じたのだが、過去にフランスでやったイベント時と比べると、非白人や女性ファンの数が増えてきた印象。白人男性が圧倒的多数なのは変わらないのだが、黒人男性やアジア人男性の姿が、過去のイベントよりは明らかに増えており、女性も同様。
 ひょっとしたらこれは、フライヤーがイベント告知のメインであった従来から、最近はFacebookなどSNSメインに変わってきた影響なのかも。つまり情報伝播において、フライヤーだと「置かれている場所(ゲイバー、クラブ、書店など)」というコミュニティへの依存度が高いのに対して、ネットだと、そういったコミュニティの客層がメインという枠がなくなるという可能性。
 もう一つ、若い世代も着実に増加。最初の仏語版が出たのがもう十年前だし、「(悪いとは知りつつ)14歳のときに初めて読んだんです」なんてファンもいたりして、なるほど納得という感じ。作家としては、若いファンが着実に増えているというのは、ありがたい限り。ただ、2010年を最後に、仏語版出版は途絶えてしまっているので、今後どうなるかを考えると、ちょっと見通しが暗い感もあり。

 そうこうする間に、確か60部だか用意してあった”The Contracts of the Fall”は、じきに売り切れ。となると当然、お客さんは店にある別の拙著の在庫を買って、サインを求めるということになるので、ここはかなり申し訳ない気分。
 開始時間が30分早まったにも関わらず、終了の四時半まで、お客さんは全く途切れず。二年前に行ったサイン会より、来てくれたお客さんは明らかに多かった。

 昨日のオープニングに来てくれた人もいれば、昨日は来られなかった知り合いもあり、ネットで交流はあったけれども会うのは初めてという知り合いもあり。というわけで、例によって記念写真を幾つか。

 グラフィック・デザイナーのティエリー・モロー。会うのは今回が初めてだけれど、彼がアール・ゾイやユニヴェル・ゼロの最近のCDジャケなどを手掛けていたこともあり、以前からネットであれこれやりとりしていた仲。
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 ティエリーのお連れさん。
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 アーティスト/モデルのアルチュール・ジレ。
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 名前を失念してしまったのだが、今度Bruno Gmünderから作品集も出るというカメラマン氏。確認しました。カメラマンのJean-Baptiste Huong(ジャン=バティスト・フォン……でいいのかな?)。サイトはこちら
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 そんなこんなで、サイン会は無事終了。
 パリ在住の日本人の友人、ユージ君とその彼氏と待ち合わせて、一緒にお茶をしにいく。同じマレ地区にあるレストラン……なのかな、ステキなパティオで、お茶やお酒が楽しめるお店。
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 入り口の雰囲気からすると、「え、ここ入って大丈夫なの?」「上着必須とかじゃない?」という感じの、なんかえらい高級そうで敷居の高い雰囲気なんだけど、別に追い返されるでもなく、値段がめちゃくちゃ高いでもなく、雰囲気も実に良くて、また行きたい。
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 フォアグラの白味噌添えという、ちょっと不思議なものも頂きました。白味噌に何かを加えた(私は蜂蜜かと思ったけど、ユージ君の彼氏によるとリンゴとのこと)甘い練り味噌という感じのものなんですが、意外なくらい美味しかった。フォアグラと一緒でも良し、パンに塗っても良しという感じ。

 夜はニコラと待ち合わせて、アートショーをやっているというフェティッシュ・バーへ。
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 今回は会えなかった知り合いのアーティスト、フル・マノなんかが参加しているショーで、そこで前にネットで見て気に入っていた、ペルーズ?という人の作品を発見。小品の販売もしていたので、早速購入。
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 するとニコラから、このアーティストは昨日のオープニングにも来ていたと。うわぁ、会えなくて残念!
 再びケヴィン&彼の奴隷とパピーに会ったので、彼らの関係について色々と話を聞く。オリヴィエはSM素養がないので(笑)頓珍漢なことを言うけれど、私は興味津々、あれこれ話して盛り上がる。

 フェティッシュ・バーの後は、ベア・バーに移動。週末の夜ということもあって、路上にも人がいっぱい。
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 しかしいい加減くたびれたし、そろそろ深夜も回りそうな時間だったので、オリヴィエに「先に帰るね」と声を掛けようと思った矢先、ティエリー・モローと再会。さっきはあまりゆっくり話す時間がなかったので、改めていろいろ話し込む。
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 そうこうしていたら、ニコラもやってきて、バーのオーナーであるサンタクロースみたいなおじさんにも紹介してもらう。そんな皆で記念写真。
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 こちらがオーナー氏。なんでもパリのベア界の親玉的な人ですって。
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 いろいろ耳に快い言葉を囁かれ、私はすっかり良い気分になってしまったんですが、囁きながらずっと私の乳首をいじるのはやめて欲しい……ってか変な気分になる(笑)。まぁ私も負けずといじり返しましたが(笑)。

11月8日(日)

 午後三時にギャラリーでお客と会うまではフリーなので、オープニングで知り合いに薦められた、オルセー美術館で開催中の『壮麗と貧窮 1850年代から1910年代までのフランスにおける売春のイメージ展』を見に行く。
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 これは実に面白い展覧会だった。
 洗濯女、街灯の下、劇場など、テーマ別に同シチュエーションの絵を展示し、その背景をテキストで解説。それに時代的な変遷が加わって、展示を見進めていくと、まるで文化人類学の本でも読んでいるみたいな面白さ。マネの「オランピア」やドガの「アブサン」といったお馴染みの名画も、売春というコンテクストが加わると、今までとは全く違って見えてくる。娼館の女たちを描いたドガ他のデッサンの数々とか、娼妓のレズビアニズムに注目したロートレックの諸作とかも、かなり新鮮。バイロスの絵をたくさん見られたのも収穫。
 18禁コーナーではビンテージの立体エロ写真や、サイレント期のポルノ映画の上映もあり。エロ写真にはゲイものも数点展示されていた。このエロ写真も、写真撮影がまだ専門的なことだった時代(セットや状況を作り込んで演出が施されたもの)から、よりカジュアルなものになった時代(好事家が馴染みの娼妓のヌードを撮ったり、乱交パーティ的なものを記録したもの)への変化などを、テキストと現物で解説してくれるので、これまた実に面白い。
 娼館や娼妓の名刺とか、高級娼婦の寝室や身の回り品など、珍しい文物の展示もあり、小さくて瀟洒な鞭もあった。オランピア以降、モチーフとして主張を始めた娼婦の展開には、クィアに通じる要素も感じられたりして、とにかく興味が尽きない展示だったので、会期中にパリに行かれる方にはお薦めです。来年1月17日まで。
 図録には英語版もあったので、迷わず購入。
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 いったんギャラリーに戻って、お客さんの相手をしたり、新規に頼まれた本にサイン。
 それから、カメラマンのパトリック・サルファーティと一緒にお茶。一昨日のオープニングで撮りそびれた記念写真を一緒に。
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 その後、インディーズ・ゲイ・コミック誌”Dokkun”を出しているファブリスと、そのパートナーのヤンと一緒にディナー。
 メニューはラクレット。チーズを溶かして、ジャガイモや生ハムにかけて食べる料理。初めて食べたけど、すごく美味しい。フォンデュよりこっちの方がずっと好きだなぁ。
 美味しい食事と、あれこれお喋りを楽しんだ後、二人とバイバイ。

 深夜近くになってから再びオリヴィエと会い、今回のあれこれや今後のあれこれについてミーティング。
 なかなか良い結果を出せたと、私は満足、彼も上機嫌。

11月9日(月)

 昼頃の飛行機でパリ出立、アムステルダム経由で日本へ。
 今回の渡航は短かったな…と思ったけど、それでも丸々一週間。いつも二週間以上なので、ちょっと感覚がズレているのかも(笑)。

パリ紀行(1)〜個展オープニング編

11月4日(水)

 昼に東京発、同日夕刻にパリ着。その足でまっすぐギャラリーへ。
 ギャラリーではオーナーのオリヴィエ、アーティストでいつも設営等を手伝ってくれているニコラ、ニコラの友人で今回が初対面の、やはりアーティストのフィリップ(……だったと思う)が、片付けの真っ最中。

 毎回基本的に額装をお任せしているニコラに、日本から持って来た展示作品を見て貰う。そうこうしている間に、フィリップにニコラと間違えられ、後ろからフランス語で話しかけられるという事例が発生(笑)。
 フィリップの作品写真をスマホで見せて貰う。人物や動植物を、クラフト紙に黒と白のポスカでデコラティブに描いたもので、ぱっと見バティックみたいな感じがして、実に魅力的。

 やがてニコラとフィリップが帰り、今度はオリヴィエと展示販売する作品の価格を決める。

11月5日(木)
 
 午前中、コレクター相手に内覧。さっそく何枚か売約済みに。幸先が良い。

 ランチはオリヴィエと一緒に、近所のトルコ料理屋で。二年前にはまだなかった新しいお店。ファストフード風のカジュアルな店舗で綺麗&美味しい。

 午後、ニコラがやってきて設営スタート。
 過去五回のパリ個展では、展示作品に新作と昔の作品を混ぜていたけれど、今回はちょっと思うところがあり、全てここ二年の間に描いた新作だけにして、技法も基本的にペン&インクのドローイングのみ(一点だけ筆のドローイングを混ぜた)。
 というわけで、全点モノクロ作品、作品サイズも技法もほぼ同一なので、ニコラもそこいらへんを汲み取ってくれて、グレーの額にグレーのマットを用意してくれた。「黒だと強すぎるし、白だと弱すぎると思うから」とのことで、私もそれに完全に同意。
 お喋りしたり、ニコラの愛犬と遊んだりしながら、ニコラが順次額装してくれた作品を、床に並べつつ配置を決める。
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 ちょっぴり価格帯が低めの作品も並べたいというオリヴィエの要望で、2013年の個展に出した作品(今回ピックアップするつもりでギャラリーにずっと預けていた)の中から、サイズが小さい作品を五点ほど展示に加えることにする。
 また、2008年に制作した限定エスタンプ『七人の侍』も、在庫が二部出てきたということなので、それも入り口に並べることにする。

 そうこうしているうちに睡魔襲来。時差ボケかしらん。
 奥のベッドでちょっと横になっていたら、そのまま爆睡。目が覚めた時にはもう夜で、準備も全て終了していた(笑)。

11月6日(金)

 朝、ベルリンから来た、拙英語版単行本の版元であるBruno Gmünderの担当編集者シメオンから連絡が。昨日のうちにパリに着いたというので、一緒にランチをすることにする。

 ポンピドー文化センターでシメオンと待ち合わせ。まず、歩いてすぐのところにある、土曜日にサイン会をやる書店Les Mots a la Boucheを、一緒に覗きに行く。このサイン会に合わせて先行発売する、新刊英語版単行本”The Contracts of the Fall”を、イタリアの印刷所から書店に直接搬入しているので、シメオンもまだ仕上がりを確認していないし、ちゃんと届いているかどうかも不安とのことなので。
 幸いにして事故もなく、本は無事に届いていて、仕上がりも上々。書店スタッフに挨拶をした後、早速キャッシャーの男子に頼まれて一冊サイン。
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 シメオンと一緒に、書店の人に教えて貰ったお店でランチ。如何にもフランスといった感じの、古いけれども雰囲気は良い小さなカフェ。
 本日のディッシュだという、ローストチキン的なものを頂く。

 ランチの後、シメオンにベルリンに持って行って貰う約束をしていた、来年の某展覧会用に貸し出す古書一式を預ける。やれやれ、これで荷物が軽くなった……と思っていたら、シメオンからお土産の画集やら何やらを渡されて、前と負けず劣らず、またカバンが重くなってしまった(笑)。
 いったんシメオンと別れて、再びギャラリーに戻る。

 午後五時、オープニング・パーティがスタート。
 開始早々、最初のお客さん。ちょっぴり日本語も操る、まだ若いハンサムくん。色々話しているうちに、日本のアニメのタトゥーを入れているというので、頼んで見せてもらう。
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 東映アニメーション『長靴をはいた猫』のペロだった。とても綺麗なタトゥー。このナイスガイ、ティエリーは、絵もお買い上げに。ありがたや、ありがたや。

 時間が経つにつれ、来場者も増加。
 現地の友人とか、いつもパリ個展に来てくれる現地在住の日本人とフランス人のご夫夫とか、名前は知らないけれど顔は覚えている人とか、今まではFacebookでのみ交流があった人とか、色々な方が次々と来場。

 そんな中から、幾つか記念写真をピックアップ。まず、さっきの、ペロのタトゥーを入れているティエリー。
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 アーティストのトム・ド・ペキン。
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 可愛い顔して、実はスレイブマスターのケヴィン。飼っている奴隷とパピー同伴で来場。
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 パリのオペラ座などで写真を撮っているという、イタリア人のカメラマン氏。
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 思わず「マッチョ化した砂川さん?」とか思ってしまったカワイコちゃん。
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 トトロTシャツを着た生トトロみたいなカワイコちゃん。
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 前にも会ったことがある、モード系のオシャレくん。
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 そうこうしているうちに、会場はどんどん混雑。
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 三時間経過したところで、用意していた飲み物のコップが足りなくなるというアクシデント。まだ残り二時間あるので、オリヴィエが急いで買いに走る。
 マンガ家のファブリスとヤン、アーティストのオリヴィエ・フランドロワ、カメラマンのパトリック・サルファーティなど、久々に会ったのに写真を撮りそびれてしまった人々も多々。
 混雑した会場内で、ちょっとしたインタビュー取材(たしかPink TVとかいうアダルト・チャンネルだったような)なども入る。

 そして夜の十時、オープニング・パーティが終了。絵も更に何枚か売れて、オリヴィエは恵比寿顔。ニコラの販促トークにも大感謝。
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 オリヴィエ、シメオンと三人で、近所のマグレブ料理屋へ。わりと有名なZeldaというお店。パリ個展初日の夜は、毎回ここで美味しいクスクスを食べるのが、いつの間にか習慣になってます。

 食事の後、ちょっと飲みに行くというオリヴィエとシメオンと別れて、私は先に一人で帰宿。
 誰もいなくなった無人のギャラリーは、さっきまでの喧噪が嘘のよう。
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ムック「ドラマ秘宝 vol.1」で『スパルタカス』について書きました

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 11月9日発売のムック「映画秘宝EX ドラマ秘宝 vol.1 マニアのための特濃ドラマガイド」に、stazのドラマ『スパルタカス』について、テキスト原稿(2000字)を書かせていただきました。
 マッチョの裸てんこ盛り+責め場あり+ゲイ描写ありの、ずっぽりハマって見たお気に入りドラマの紹介文なので、愛と熱量をタップリ込めました。
 昨今、動画配信サービスも色々盛り上がっておりますので、洋ドラのガイドブックも兼ねて是非お手元に一冊どうぞ!
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フランス、パリで個展&サイン会やります

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 11月6日から、パリで個展やります。早いもので、最初のパリ個展から数えて、もうこれで六回目。
 場所はいつもの、ArtMenParisギャラリー。
 期間は11月6日から18日まで。
 オープニング・パーティは6日の金曜日、時間は17時から22時まで。私も在廊しますので、お近くの方はお気軽においでください。(Facebookイベントページ
 翌7日以降、ギャラリーは予約制になります。訪問希望の方は、事前にギャラリーに連絡して予約をとってください。

 出展作品は、最近のペン画(モノクロ)を中心に15点ほどを予定。初公開となるオリジナル新作も展示します。
 もちろん販売もいたします。
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The Contracts of the Fall (2015) pen, ink & alcohol ink marker on paper

 サイン会はオープニングの翌日、7日の土曜日に、マレ地区にある書店Les Mots a la Boucheにて。時間は15時から16時30分まで。(Facebookイベントページ
 新刊英語版単行本”The Contracts Of The Fall”も先行販売いたします。本の持ち込みも可。
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 それでは、パリおよび近郊にお住まいの方、期間中に訪問予定のある方、いらっしゃいましたら、是非お立ち寄りください!

ちょっと宣伝、『弟の夫』第13話掲載です

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 10月25日発売の雑誌「月刊アクション」12月号に、マンガ『弟の夫』第13話「ホットチョコレート」掲載です。
 今回はショタ回! どういうことかって? 読んでくだされば判ります(笑)。
 というわけで、是非お買い上げよろしくお願いいたします!
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ちょっと宣伝、『プラネット・ブロブディンナグ』第2話掲載です

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 10月21日発売の「バディ」12月号に、連載マンガ『プラネット・ブロブディンナグ』第2話掲載です。謎の惑星に漂着した地球人兵士が、デカい熊系亜人のペットにされていくという奇想系エロマンガ。
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 マニア受け系の題材なので、同好の士は是非応援よろしくお願いします。
 そして来月は一回お休みします。個展のために海外渡航するので、現在抱えている連載マンガは各掲載誌にお願いして、それぞれ一ヶ月の時間差でお休みをいただくことにしました。
 というわけで『プラネット・ブロブディンナグ』の連載は、12月20日発売の「バディ」2月号から再開予定です。
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雑誌「現代思想」のLGBT特集号にエッセイ書きました

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 本日発売の雑誌「現代思想」(青土社)2015年10月号《特集=LGBT 日本と世界のリアル》に、「同性婚」と『弟の夫』についてのエッセイ「隣の《同性婚》を考える」(1200字)を寄稿させていただきました。ページ数は少ないですが、LGBT特集のトップに掲載していただいたので、見つけやすいと思います。
 同特集では、「エッセイ」「討議」「『同性婚』とは何か」「政治/経済」「地方から問い直す」「生活の中で」「<家族>を思考する」「情動/身体」「世界のクィアから」「実践を問う」「歴史を問う」といった、多角的な章立てがなされており、それぞれについて各2〜4名の方々が寄稿。学術よりの論者が多く専門用語も頻出するので、読みやすくはないですが読み応えはありそう。
 というわけで、宜しかったら是非お読みください。
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 Kindle版もあります。
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ちょっと宣伝、『弟の夫』第12話掲載です

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 先週の金曜日(9月25日)発売の雑誌「月刊アクション」11月号に、『弟の夫』第12話「ジム」掲載です。
 今回はマイクの出番多し。
 というわけで、是非一冊お買い上げください!
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“Floating Skyscrapers (Plynace wiezowce/真夜中のふたり)” (2013) Tomasz Wasilewski

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“Floating Skyscrapers (Plynace wiezowce/真夜中のふたり)” (2013) Tomasz Wasilewski
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk

 2013年のポーランド製ゲイ映画。原題”Plynace wiezowce”、ポーランド映画祭2014で『真夜中のふたり』の邦題で日本上映あり。
 ガールフレンドもいる若い水泳選手が同性に惹かれていき……という内容。

 青年クバは将来を嘱望されている水泳選手。母と二人で暮らす家に、ガールフレンドのシルウィアも同居させて、寝室も共にしている。ある日クバはシルウィアと一緒にギャラリーのパーティに行くが、どうも場違いな感は免れず、外に出てジョイントを吸っていると、青年ミハウと出会う。
 クバはミハウに惹かれていくが、自分の同性愛傾向を完全に肯定することはできず、シャワールームで別の男にフェラチオさせたりとか試みはするのだが、達する前にやめてしまい、逆にシルウィアの身体を激しく求めたりする。
 一方のミハウは自分がゲイだと自覚しており、母親もそれを知っているが、父親へのカムアウトは、まるで何事もなかったかのように流されてしまう。
 気持ちの揺れるクバは水泳の練習にも身が入らず、遂には大事な選考試合の途中で棄権してしまう。一方でシルウィアは、クバとミハウ双方の抱いている感情に気付き、何かと当てつけめいた態度をとるようになるのだが……といった内容。

 この映画で描かれる、自分がノンケだと思っていた男が、何かのきっかけにゲイであることに気付き、それまでの諸々のしがらみやセクシュアリティの揺らぎ、周囲から強要されて自分も飲み込まれてしまう社会的な抑圧の中で悩む……といったテーマは、昔から繰り返し語られてきた内容。
 表現は淡々としてリアリズム重視。エピソードがドラマチックにうねりを見せるわけではなく、1つ1つの、それ自体はほんの些細なエピソードを丁寧に描き、その積み重ねで様々な事象が浮かびあがっていくというタイプで、若干の弛緩はあるものの、なかなか魅力的。
 時に硬質、時に感覚的な映像表現も、ところどころ「おっ」と思わされる美しい映像などもあって、これも魅力的。
 また、クバ役の男優はハンサムで、身体も美麗。直截的なゲイセックス場面はあまりないけれど、センシュアルなヌード場面は多々出てくるのも魅力の一つ。
 ただ、そういったリアリズム表現であるが故に、これはやはりポーランドの社会状況もリアルに反映しているのか、ストーリーの決着はかなりビター。はっきり言って「久々に後味の悪いゲイ映画見ちゃったなぁ……」という感じで、これは好みが分かれそう。

 ちょっと興味深いのは、一昨日感想をアップした“Land of Storms”も、昨日の“Snails in the Rain”も、やはり同様に、なかなか自己受容できないゲイという、インターナライズド・ホモフォビアを扱い、結末もリアル視点で社会状況を反映したビターなものであるにも関わらず、鑑賞後のそれぞれの後味は異なるあたり。
 いずれも自分的にはあまり好きなタイプのエンディングではないのだが、”Land…”は好き嫌いは別として納得はいく、”Snails…”も何かイガイガした感じは残るものの余韻自体は悪くない。しかしこの”Floating…”の後味はハッキリと悪く、余韻というよりも見終わって気分が暗くなる感じ。そういえば若い頃に、ウィリアム・ワイラー監督の『噂の二人』(1936)や、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『自由の代償』(1975)を見終わったときも、こういう嫌〜なというか暗〜い気持ちになったっけ……などと、ふと思い出したり。
 何というか、こういったゲイにとっては厳しい社会状況を描く際に、作品としてそれに抗議している意志が見えるか見えないかで、私の印象は大きく左右されるのかも知れない。逆に言うと、そういった「嫌さ」を引き起こす”Floating…”の視線のフラットさは、ひょっとしたらスゴいのかも知れないけれど、やはり個人的には、ゲイテーマの扱い方が昔風のそれから脱していないように思えてしまう。

 とはいえ、前述したように見所はあちこちありますし、映画的なクオリティも高い一本。主演男優も魅力的だし、とにかく後味の悪さを覚悟して見れば、見応えはある一本です。