ちょっと宣伝、「映画秘宝」12月号にインタビュー掲載です

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 本日発売の雑誌「映画秘宝」12月号に、インタビュー掲載です。大西祥平さんのレギュラーコーナー、「ニュー漫画大学 秘宝分校」にて。
 インタビューの中身は、先月「月刊アクション」で連載スタートしたマンガ『弟の夫』について。

 インタビュアーの大西さんは、まだ面識のなかった頃から、お仕事を拝見してリスペクトしていた方ですし、また、私の仕事がまだゲイ雑誌以外の媒体では殆ど紹介されていなかった頃、初めてインタビュー(媒体は雑誌『スナイパーEVE』)を申し込んでくださった方でもあります。いま確認したら、あれからもう12年も経っていてビックリ。
 また、単行本『外道の家』下巻をお持ちの方ならお判りかと思いますが、同書の編集者から巻末に何か解説を収録したいと言われ、一も二もなくお願いした方でもあり、そのマンガ読みとしての視点の確かさに、僭越ながら私が絶大な信頼を置いている方。
 そんな大西さんが聞き手で、『弟の夫』担当編集氏も同席ということもあり、私は安心しまくって喋りまくり(笑)。その結果、連載一回分では収まりきらないということで、有り難くも二号連続で掲載ということになりました。
 というわけで、本日発売の12月号と来月発売の1月号、どちらもお見逃しなく、お買い上げよろしくお願いいたします!
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外国語記事あれこれ

 最近リリースされた、非日本語媒体でのインタビュー記事や紹介記事などを、あれこれまとめて。

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 イタリアのゲイ雑誌”PRIDE” 10月号にインタビュー記事掲載。内容は先日ボローニャで受けた取材に基づくもの。
 オンラインで閲覧&PDFダウンロード可能です。私の記事掲載ページはP.14。
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 AtomicBoyXさん(実は知人)のブログ、Gaijin • Tokyo • Undergoundに英語インタビュー掲載。先日メールでやりとりしたもので、内容は主に新連載『弟の夫』にまつわるあれこれ。
Interview: Gengoroh Tagame on his new manga series

 その他、『弟の夫』連載開始に関して、幾つかの言語でニュース・リリースあり。
英語:Gay Manga!
イタリア語:Anime Click – A settembre, un manga mainstream per Gengoroh Tagame
フランス語:Yagg – Gengoroh Tagame à l’assaut du grand public
スペイン語:Mision Tokyo – Gengoroh Tagame cambia de registro

ちょっと宣伝、「月刊アクション」でマンガ連載『弟の夫』スタートです

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 昨日(9月25日)発売の雑誌「月刊アクション」11月号から、新連載マンガ『弟の夫』スタートです。

 一般的なマンガ雑誌で、ゲイ・イシューを取り扱ったマンガを描くという、私にとっても全く新しい挑戦。
 非ゲイ&非BL系の雑誌では、過去に何度かレディースコミックを描いていますが、それらにはゲイ要素は含まれていませんでしたし、一般系の媒体でゲイマンガを描かせていただいた例では、単行本『筒井漫画涜本再び』がありましたが、あれは原作付きでしたし……。
 そんなマンガの掲載を決めた、「月刊アクション」編集部の英断&蛮勇には大感謝。しかも表紙&巻頭カラーというありがたさ。

 というわけで、是非一冊お買い求めの上、お読みくださいませ。
 コンビニだとちょっと置いていなさそう(少なくともウチの近所のローソンでは見たことがない)ので、本屋さんに行かれるのが吉かと(同じくウチの近所のTSUTAYAには毎号入荷)。
 平台にない場合、背表紙がこんな感じなので、このイラストが目印!
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 あと、連載スタート記念として、サイン入り直筆イラスト色紙のプレゼントもあります。無事に雑誌ゲットに成功したら、応募要項をご参照の上アンケートと一緒に、どしどし応募してください。
 こんな色紙です。
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もし、本屋で見つからない&買いに行く暇がないなんて場合は、アマゾンでも売っています。
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 というわけで新連載『弟の夫』、応援よろしく&今後を生暖かく(笑)お見守りくださいませ!

【余談】

*紹介記事&表紙イラストのノートリミング&文字なし版が、下記リンク先で見られます。
アキバBlog:【コラム・ネタ・お知らせ】今、押しかけのニーナが絶望の居間で弟の夫に宙色アタック!!~おこしやす★今月のアクションコミックス新刊&新連載♪

*紹介記事&本文カラー扉ページが、下記リンク先で見られます。
Webコミックアクション:月刊アクション
コミックナタリー:田亀源五郎が月刊アクションに、“弟の夫”描く

ファッション&アート・マガジン”NakedButSafe”にインタビューと作品掲載

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 ファッション&アート・マガジン”NakedButSafe”の7号に、インタビューと作品が掲載されました。
 エッジの効いたファッション写真や、コンテンポラリー・アーティストや映画監督、ミュージシャンなどの作家&作品紹介などが載っている雑誌で、言語は英語で販売はワールドワイド、本拠地はギリシャらしいです。

 私は、表紙でも名前がトップに載っているように、インタビューと作品画像を合わせて12ページと、かなり大きく扱っていただいています。
 そしてこのインタビューが、大判雑誌(A4強)に文字ビッシリで、なかなかの分量。メールインタビューだったんですが、届いた添付ファイルを開いてビックリ、何と質問事項だけで4000ワード以上という大ヴォリューム(笑)。それもあってか、回答期限も2ヶ月くらい余裕があったという(笑)。
 更にその質問が、私が近年受けた取材の中では、ダントツに面白い内容でした。私の作品についてや、作品製作における考え方などの質問はもちろんのこと、日本と西洋の差異や、エロティック・アート全体に対する考え方、ゲイ・カルチャーやゲイの置かれている社会的状況についての質問などもあり、思わず答えにも力が入るという塩梅。
 結果、インタビューとしてはかなり読み応えのある内容になっています。私もかなり踏み込んだところまで、自分の考えを述べているので、英語OKの方なら是非ご一読いたただきたいくらい。
 また、いつも取材で答えているのに、何故かカットされがちな内容……例えば、私のエロ作品に見られる残酷性云々や、日本のエロティック・アートの暴力性(特にエロマンガの)云々といった質問に対して、逆にこちらから、前者については西洋の宗教芸術(殉教図とか受難図とか)や古典好色小説(サドとかアポリネールとか)に見られる残酷性はどうなんだという問題提起や、後者についてはそれを考える前に、まず日本のマンガ市場の他に類を見ない巨大さを大前提として把握しておくべきだという主張などが、今回はきっちり載っております。

 雑誌全体は、すっきりとクールな見せ方で、なかなかカッコ良いです。こういう雑誌に載る事が出来て嬉しいと思わされる感じ。
 他のページも、ちょっとサンプルを載せましょうか。
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 まあ、こういう雑誌なので、掲載されている私の作品も、先日のベルリン個展の出品作の中から、比較的大人しめのものが選ばれています。
 特集に書かれた文言を引用すると、「我々の西洋文明は田亀の作品と上手く付き合えるほど高度に発達していないので、雑誌が発禁になったりポルノショップでしか売られなくなったりしてしまうのを避けるため、その美しいドローイングの中から無難なものだけを掲載します」だそうな(笑)。かといって、性器の直接表現すらNGな日本文化が高度に発達しているとは、私にはとても思えないんだけど(笑)。

 この雑誌、版元のサイトから通販できるようです。本自体の値段は8ユーロですが、送料が18ユーロもかかってしまうらしい……。
 ともあれリンクを貼っておきますので、欲しいというご奇特な方がいらっしゃいましたら、どうぞご利用ください。
http://nakedbutsafe.com/

ちょっと宣伝『奴隷調教合宿』第12話掲載です

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 9月20日発売、雑誌「バディ」11月号に、連載マンガ『奴隷調教合宿』第12話掲載です。
 今回は転換回なんで、ちょっとエロ控えめですが、もうじき完結する予定なので、どうぞ最後までお付き合い、よろしくお願いします!
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“Pit Stop” (2013) Yen Tan

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“Pit Stop” (2013) Yen Tan
(アメリカ盤DVDで鑑賞→amazon.com、日本のアマゾンでも購入可能→amazon.co.jp

 2013年のアメリカ製ゲイ映画。
 テキサスの田舎町を舞台に、それぞれ人生に行き詰まった感のある、ワーキングクラスのゲイ男性二人の諸々を、詩情を湛えて静かに描いたドラマ。

 テキサスの田舎町。荷物の積み卸しなどを行う肉体労働者のアーネストは、病院で昏睡状態にある元彼を見舞う日々。大工のゲイブは妻子のある身ながら、やはり妻子持ちの男性との不倫が発覚、男との関係を清算し妻とも離婚したが、娘のために妻子と同居を続けている。
 アーネストは自分の家に、既に関係の冷えた若いBFを居候させているが、その彼は独立して家を出て行くとは言うものの、なかなかその気配を見せない。意識の戻らない元彼に語りかけ、愛のない同居を続けるという、その停滞した日々に、アーネストは次第に焦燥感を募らせていく。
 ゲイブの元妻は、彼女に好意を寄せている職場の同僚とデートをするが、歯車がいまいち噛み合わず、元夫との過去の平穏な生活を懐かしむ。そんな彼女をゲイブは優しく受け止めるが、自分を欲しいかという彼女の問いに、イエスと答えることはできず……といった内容。

 良い作品でした。
 ゲイ・コミュニティやゲイ・シーンなどとはほぼ無縁の、アメリカの田舎町に暮らすゲイたちと、その周辺の人々の姿を、作為的なドラマや説明的なセリフを排して、淡々としながらも情感豊かに、そして極めて自然な空気感で描いています。
 何と言う事はない日々の描写と、散りばめられた日常会話が積み上げられることで、メイン二人のみならず、その周囲の人々も含めて、それぞれが置かれた状況や、その複雑な心境が浮かびあがってくる……という構成で、なかなか見応えがあります。
 ドラマとしては、とりたてて何か事件が起きるわけではないんですけど、描かれるエピソードのディテールや、感情の細やかな襞を描く描写などを見ているだけでも充分面白く、それと共に各キャラクターへの愛着や感情移入も増していくという塩梅で、ここいらへんは実に上手い。
 モチーフ的には、けっこう重かったり閉塞感もある状況なんですが、全体の柔らかな雰囲気や、上手い具合に挿入される箸休め的な描写によって、作品として重くなり過ぎていないのも佳良。
 アメリカものとしては珍しく、日本のゲイ状況と似た部分が多いのも興味深いポイント。

 メインキャラクター二人が、どちらも三十代半ばの中年男性だというのも効果的。人生を長く過ごしている分、様々なしがらみも生じており、若い人のように全てを精算してやり直すとか、この田舎町を出て行くといった選択肢が難しいことが、若い元BFとの対比もあって、より良く浮かびあがってきます。
 また、メインの二人のみならず、元BF、元妻、元妻に好意を寄せている彼女の同僚、ゲイをオープンにしていないゲイブに対して、ひょんなきっかけから接近してくる、やはりクローゼットの中年ゲイ男性……といった、周囲の人々の姿や思いなども、ちょっとしたエピソードやセリフの端々で見えてくるのも魅力的。
 つまり、メインのフォーカスはアーネストとゲイブの二人ではあるけれど、彼ら同様に他の人々も皆、それぞれが大小様々な悩みや思いを抱えており、それぞれにドラマがあるという感じ。そしてメインのゲイ由来のドラマも、そんな「世の中に普通にある光景」の1つという感じ。

 ちょっと情緒に流れがちな傾向はあるものの、演出や撮影のクオリティは高く、役者の演技も文句なし。作為や予定調和は排しながらも、仄かなロマンティシズムを秘めた予感で幕を引く、その後味も上々。
 というわけで、丁寧に作られた良作でした。単館系の映画が好きな人にオススメできる一本だと思います。

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Class Comicsのアンソロジーに作品提供

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 カナダに拠点を置き、英語圏を中心にアメコミスタイルのゲイ・エロティック・コミックを出版している、インディペンデント出版社Class Comicsのアンソロジー”Heroes in Peril”(電子書籍)に、カラーイラスト一点寄稿しました。
 内容は、同社のスーパーヒーローキャラのピンチ場面を、世界中のゲイ・エロティック・アーティスト約60名が、それぞれのテイストを活かしてフルカラーピンナップを描くというもの。

 私は、Deimosという紫色の肌をした悪魔系のキャラを選んで描かせてもらいました。
 というわけで、チラ見せ。海外出版なので、もちろん全体像は完全無修正です。(羨ましい……)
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 他の寄稿作家さんも含めて全体を見ると、ピンチ絵というテーマなので、必然的にSMや凌辱イラストが多くなっています。
 また、アメコミ的世界観なので、職種やら人外やら機械やらの登場頻度も高し。
 電子書籍(PDF)なので、クレジットカードさえあれば日本からもダウンロード購入可能なはず。

 ご購入や、より詳しい寄稿作家リストなどは、下のリンクからどうぞ。
http://www.classcomics.com/ccn/2014/08/heroes-in-peril-volumes-1-and-2-now-available/

 Volume 1と2がありますが、私が乗っているのは、こちらのVolume 2の方です。
http://www.classcomics.com/cart/product.php?productid=333

ちょっと宣伝、9月から新連載始めます


…というわけですので、よろしくお願いいたします (^^)

Butt Magazineのサイトにインタビュー掲載

ButtMagazine
 オランダに拠点を置き、英語で全世界展開しているゲイ雑誌Butt Magazineのサイトに、インタビュー記事(英文)が掲載されました。
http://www.buttmagazine.com/magazine/interviews/gengoroh-tagame/
 インタビュー自体は去年の5月、”The Passion of Gengoroh Tagame”出版のプレスでニューヨークに行ったときに、Skype経由で収録したもの。インタビュアーはZac Bayly、同席の通訳はアン・イシイ、場所はチップ・キッドの家。
 インタビューが始まるや否やチップの家政婦さんが来てしまい、彼女が後ろで掃除している中でpenisだのanusだのfist fuckだのと答えるという、スリリングな状況での収録(笑)。
 写真は今年の4月にベルリンで撮影したもので、カメラマンはGeorg Rohlfing。最初の予定は、ギャラリー内で手早く撮影を済ませるという話だったんですが、カメラマンチームが移動中に見かけた、桜の花が満開で綺麗な場所でも撮りたいと希望。
 結果、こういう感じに。まぁきれい(笑)。

“Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela” (2013) サンジャイ・リーラ・バンサーリ

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“Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela” (2013) Sanjay Leela Bhansali
(インド版Blu-rayで鑑賞→Bhavani DVDラトナ・ボリウッド・ショップ

 2013年のインド/ヒンディ映画。『ミモラ』、”Devdas”等のご贔屓、サンジャイ・リーラ・バンサーリ監督作品。ロミオとジュリエットをベースにした、絢爛豪華&濃厚な恋愛もの。

 北インド、グジャラート地方にある砂漠の中にぽつんとある、露天で公然と銃器が売買されているような、きなくさい村。その商売と村の覇権は、代々対立し合ってきた二つの一族、ラジャリ家とサネラ家に握られている無法地帯だった。
 そんな中、祭の日に、ラジャリ家の次男坊ラムと、サネラ家の一人娘リーラは出会い、運命的な恋に落ちる。しかし二人の仲を周囲が許すはずもなく、リーラの母でサネラ家の強面女当主や、ラムとリーラそれぞれの兄たちを巻き込み、裏切りや陰謀も交えた抗争劇に…という内容。

 インドの古典小説を題材に、インド的豪奢と華麗の極みを尽くした”Devdas”、『奇跡の人』の翻案をミュージカル場面なしで描いた、感動シリアス劇の傑作”Black”、興行的には失敗したけれど、個人的には高評価のドストエフスキー『白夜』が下敷きの意欲作“Saawariya”、等々、優れた作品を連発しているバンサーリ監督。今回も期待を裏切らない出来映え。
 そういった過去作品と比べると、テイスト的には”Devdas”に最も近いです。激情の恋愛譚を綴る濃厚なドラマと、それを彩る豪華絢爛な美術、そして溜め息が出るような色彩美に酔わせてくれる一本。
 ただ”Devdas”がオーセンティックで格調高いムードであったのに対して、今回はそこにクライム映画的な要素が加わることによって、猥雑さやポップ感が増した印象となっており、そこいらへんがまた違った新たな味わいに。
 ロミオに相当するラムは、ビデオ屋でポルノDVDを販売しているような男だし、ジュリエットのリーラも、平然と銃を構えたり自分から男の唇を奪うような強い女。そんな二人が激情の純愛に落ち、シェイクスピア譲りのクラシカルな恋愛劇を見せるという、その対比の妙味。
 そんな二人の激情も濃厚ならば、ドラマの展開も濃厚、そして画面も絢爛豪華にして濃厚展…と、諸要素がピタリと一致しているのも大成功。
 監督の作家性という意味では、過去作に良く見られたような、既成概念に疑問を呈し新たな価値観を提示するといった方向性は、本作に関しては希薄ですが、しかしそれもまた、ストレイト・アヘッドな魅力となっている感じ。
 テーマ的な冒険がない分、破綻もなく完成度が高い印象。

 ラム役のランビール・シン、期待上げた肉体を惜しげもなく晒し、ロマンスのヒーローでありながら、ふてぶてしさも併せ持ったキャラとして、もう文句なし。初めてこの人を見た“Band Baaja Baaraat”と比べると、驚くべき成長ぶり。
 リーラ役のディーピカー・パードゥコーンの演技も見事で、これまた初めてこの人を見た『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』と比べると、美貌はそのままに演技の幅がグッと拡がっている感じ。
 サネラ家の女ボスやリーラの兄嫁といった、サポート陣の役者さんたちも、存在感も演技も共にバッチリ。特に兄嫁さん、“Gangs of Wasseypur (血の抗争)”に引き続き印象的に残ります。
 ミュージカル場面も、豪華絢爛なセットとガッツリ群舞で、ばっちり見所を作りつつ、しかもドラマからも浮いていない、相変わらずの手腕の確かさ。更にゲストで、某スター女優が登場するというお楽しみも。

 シェイクスピア劇との比較という点では、基本の構造は『ロミオとジュリエット』に則りながら、前半は比較的忠実に展開をなぞっています。とは言え、キャピュレット家当主に相当する存在は前述したように女ボスになっているし、ティボルトに相当する役はジュリエットの従兄から兄に、ジュリエットの乳母的な役回りは兄嫁に、モンタギュー家の方も、マキューシオに相当する役がロミオの兄になっていたりと、キャラクターのアレンジはかなり自由。
 そして後半からは、展開も含めてかなり自由な翻案となります。ロレンス修道僧に相当する役回りのキャラはいませんし、パリスに相当するキャラもなし。クライマックスも、原典とは全く違う展開を見せつつ、更にそこに親子の情愛などの要素が盛り込まれています。
 また全般に渡って、シェイクスピア劇の台詞を踏襲することもなく、全体のアレンジ具合を見ると、『ウェスト・サイド物語』の方に近い印象。特に《ジュリエット/ティボルト/乳母》を《リーラ/リーラの兄/兄嫁》にアレンジしている部分は、展開も含めて『ウェスト・サイド物語』の《マリア/ベルナルド/アニタ》を踏襲しています。
 こういった過去作品からの引用は、これまでのバンサーリ作品でも良く見られるパターン。一例を挙げると、”Saawariya”で原作『白夜』にはない娼婦のパートがあるのは、おそらくヴィスコンティ版『白夜』からの引用だったし。

 というわけで、『ロミオとジュリエット』をソースにしつつ、そこに同じく『ロミオとジュリエット』の翻案である『ウェスト・サイド物語』も盛り込み、クライムドラマならではの展開や味付けも加えて(これはひょっとしたらディカプリオ版からの影響もあるのかも知れませんが、浅学ながら未見なので比較できず)、クライマックスではしっかりオリジナル展開を見せつつ、しかしテーマは原典を外さないという内容。
 そしてとにかく美麗で豪華絢爛。溢れる色彩美とその物量は、ホント目の御馳走。激情の恋愛映画にして、味わいも濃厚。文句なしにオススメできる一本です。