“Paradesi” (2013) Bala

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“Paradesi” (2013) Bala
(海外版DVDで鑑賞→Bhavani DVD
2013年のインド/タミル映画。個人的にご贔屓のタミル映画の鬼才、“Sethu” (1999)、“Nandha” (2001)、“Pithamagan” (2003)、 “Naan Kadavul” (2009)、“Avan Ivan” (2011)などの、バラ監督作品。
 イギリス統治下の紅茶プランテーションにおける、奴隷労働者たちの苛酷な運命を描いた内容で、英題はNomad、Vagabondなど(つまり『放浪者』)。

 20世紀初頭、イギリス統治下のインド。
 南インドの貧しい農村に、ラサというちょっと頭の弱い青年がいた。両親のいない彼は年老いた祖母と二人暮らしで、太鼓を叩きながら、結婚式の報せを村中に触れ回り、それで食事を貰ったり、ゴミ拾いや薪割りなどをしている。
 頭の弱い彼をからかう村人もいて、中でもアンガマという若い娘は、しょっちゅう彼にちょっかいを出したり、意地悪をしたりする。そんな中、村で結婚式が行われ、ラサも下働きをしてから宴席に着くのだが、彼だけ食事を分けて貰えない。
 泣きながら立ち去ったラサに、アンガマは食事を持っていく。ここで初めてアンガマは、実は自分がラサのことを好きで、だからいじめていたのだと自覚し、彼に愛を告白する。彼もそれを受け入れ、二人は急速に仲良くなり、やがて男と女の関係になる。
 こうしてアンガマとの結婚を夢見るようになったラサだが、それを知ったアンガマの母は猛反対し、それは村の会議にかけられるほどの問題に発展する。ラサはアンガマと結婚するために、村を離れて仕事を探しにいき、別の場所で薪割りの仕事を得る。
 しかし仕事を終えても、薪割りを命じた人はお金を払ってくれない。ラサが路傍で泣いていると、身なりの良い男が声をかけてきて、ラサの村の名前を聞いて目を光らせる。男はラサと一緒に村へ行き、村人たちに「自分は遠方の農園で働く出稼ぎ労働者を捜している」と告げる。
 男が話す、一年間の契約労働の条件の良さや、契約時に渡されるアドバンスに惹かれ、ラサも他の村人たちも、ある者は妻を残し単身で、別の者は女子供でも働き手になれて稼ぎも増えるという言葉に誘われて家族ぐるみで、次々とその男と契約する。
 別れを嘆く祖母とアンガマを残し、ラサたち一行は男に連れられて出発するが、それは徒歩で二ヶ月近くもかかるような遠方への旅だった。しかも男の態度は豹変し、旅の途中で行き倒れた男を瀕死のまま置き去りにし、その妻が泣いて抵抗するのを無理矢理連れて行くような冷酷さを見せ始める。
 やがて一行は目的地に着くが、そこで待っていたのはイギリス人がインド人を使って経営している、地獄のような茶畑だった。一方、村ではアンガマがラサの子供を妊娠していることが発覚し、彼女は母親から家を追い出されてしまう。しかしラサの祖母が、彼女を迎え入れてくれ……といった内容。

 いや、これはきた……ずっしりヘビー級の見応え。やってくれましたバラ監督。
 前作”Avan Ivan”は、部分的な見所のみで、全体的にはちょっと残念な出来でしたが、本作は力作だった前々作”Naan Kadavul”を完成度という点で凌ぎ、傑作”Pithamagan”にも近い出来映え。
 最初はわりと気楽に見られます。もちろん村人にハブられてしまう主人公なんかは可哀想なんですが、それでも村娘とのロマンスはあるし、何だかんだで楽しく見られる。農園に着いてからもしばらくは、確かに酷いところなんですが、それでも見ていてこっちの神経がやられるまでではない。
 ところが農園に着いてから一年後、契約期間が終わるところになって、一気に地獄が牙を剥き、後はもう「うわああぁぁぁ……」の連続。希望はどんどん叩き潰され、しかも達者な演出でエモーションも刺激されまくりで、見ていてどんどん鉛のような気分が溜まっていきます……。
 基本的に、人の世の醜さや残酷さをえぐり出すのは、この監督のいつもの作風ではあるんですが、今回とにかくキツかったのは、イギリス人がインド人監督を酷く扱い、そのインド人監督がインド人労働者を酷く扱い、労働者間でも嫌がらせなどがあり……といった差別や虐待の連鎖を、容赦なくえぐり出してくるところ。
 また、ろくな医者もいなかった農園に、ようやくヒューマニストらしき医者がきた……と見せかけて、実は彼らの主たる目的はキリスト教の布教にあり、彼らがインド映画風に脳天気に宣教を歌い踊っている間に、メインの登場人物が病気で死んでいったり……という、徹底して醒めた視点による容赦なさ。
 そしてクライマックス、この冷徹な眼差しはピークに達し、素晴らしくエモーショナルな演出と、真に迫った演技によって、ある側面だけ取り出して見ればハッピーエンドとも言えるんだけど、それが同時に徹底的なバッドエンドでもあるというラストシーンに……もうここは、思い出すだけで「うわああぁぁぁ……」って感じ。
 決して後味が良いとは言えないとか、何とも複雑な後味だという意味では、バラ監督の他の作品も、割と似たり寄ったりなんですが、それでも以前の作品では、主人公である異者が神話的に変容するというカタルシス等があったけれど、今回はそれすらなく、ひたすら打ちのめされて終わるので、とにかく後味がヘビー級。
 演出は相変わらず素晴らしく、画面のスケール感やカメラワークも見事(冒頭の移動撮影とか、クライマックスのクレーン撮影とか!)だし、主演の青年を筆頭に、役者陣も皆素晴らしい演技。

 見終わった後、何とも言えない気分になってどよ〜んとしますが、間違いなく一見の価値有り。後味をどう感じるかはともかくとして、見応えとクオリティは保証します。
 バラ監督作品の中でも、個人的にはベスト2(一位はやっぱり”Pithamagan”)の作品でした。

“I Want Your Love” (2012) Travis Mathews

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“I Want Your Love” (2012) Travis Mathews
(イギリス盤DVDで鑑賞→amazon.co.uk
 2012年のアメリカ製ゲイ映画。住み慣れたサンフランシスコから故郷に帰らなければならなくなったゲイ青年と、その友人たちの一日を描いたもの。
 赤裸々なセックス描写のためにオーストラリアの映画祭で上映禁止となり、物議を醸した一本。

 主人公ジェシーはゲイで、パフォーマンスに携わるアーティスト。サンフランシスコで同じくゲイの友人とルームシェアをして暮らしていたが、故郷(アイオワだったかな?)に帰らなければならなくなり、お別れパーティが開かれることになる。
 ジェシーのルームメイトは、自分のボーイフレンドをジェシーの後に住まわせようとするが、そのボーイフレンドはルームメイトと別の友人の仲に嫉妬を覚え、二人の仲は少しギクシャクする。
 一方のジェシーは旅立ち前の落ち着かない気持ちの中、元彼とのハッピーなセックスのことを思い出す。ジェシーから連絡を貰った元彼は、ジェシーに会いに行くための服を服屋で選び、そこで黒人青年と親しくなる。元彼は服を着替えてジェシーと会いに行くが、二人は和やかな時間を過ごすものの、何も起こらない。元彼は黒人青年に連絡し、ジェシーのお別れパーティで落ち合おうと言う。
 騒がしいお別れパーティで、ルームメイトとボーイフレンド、そしてボーイフレンドが嫉妬したルームメイトの友人は、一緒に3Pをする。ジェシーの元彼と例の黒人青年もセックスをする。
 しかしジェシーはパーティの喧噪に加わる気がせずに、独り部屋で音楽を聴いている。そこにもう一人のルームメイトがやってくる。ジェシーはそのもう一人のルームメイトと他愛のない会話を交わすうち、やがて今後の不安に襲われ思わず涙ぐんでしまう。そんなジェシーを、もう一人のルームメイトは優しくいたわり、やがて二人は服を脱ぎ愛撫を交わすのだが……といった内容。

 昨今のゲイ映画のトレンドの一つ(だと私が思っている)、あまりドラマらしいドラマは紡がれず、日常的で身近なエピソードを点景的に繋いで見せ、その中で微妙な感情の起伏などを見せるタイプの作品。
 というわけで交わされる会話も、ストーリーを進行させるためのそれではなく、日常的な雑談的なものが主で、しかも完全に現代口語なので、正直これをヒアリングのみで鑑賞するのは、私にはいささかハードルが高く、ディテールはかなり拾い損ねていると思います。
 ただ、キャラクターの存在感や全体の空気感が、これがもうリアルそのもので、俳優が演じる作られたドラマを見ているという気が全くしなくなるほど。おそらく低予算の作品なんですが、撮影技術なども悪くなく、カット繋ぎのテンポなどもこなれているので、全体の尺が70分というコンパクトさもあるんですが、自分でも意外なほど見ていて作品に引き込まれました。

 物議を醸したセックス描写は、これはもう赤裸々というかあからさまというか、もう完全にハードコアポルノ的なそれ。ペニスの勃起から手コキからフェラからゴム被せからツボ舐めから指マンから挿入から射精の瞬間から、もう全てズバリそのものを見せています。
 ただしいわゆる商業的なポルノと異なるのは、まずセックスしているのがポルノ的に理想化された男優ではなく、いかにもそこいらへんにいそうなアンチャンどもで、身体の線はゆるいわ顔もそこそこ止まりだわ、○○系といったステレオタイプやクローンでもないところ。
 また、行為そのものは赤裸々に、そして時間もたっぷりとって描写されるんですが、表現的にはいわゆるポルノのそれとは全く異なっています。つまり、一つの行為を延々と映したり、結合部にも照明が当たってよく見えたり、視聴者を挑発したりとかいった、そういった要素が皆無。
 では、具体的にはどういうものかというと、これまたドラマ部分の描写同様にリアルそのもの。赤裸々だけれど、挑発的でも露悪的でもなく、スタイリッシュに処理することもない、そんな多くの皆が日常で行っているようなセックスと同様の光景が、スクリーン上で(正確には液晶TVのモニターですが)繰り広げられます。
 また、日常的とはいっても、そこは素人生撮り的な退屈さとも無縁で、しっかりフェティッシュな感触のクローズアップが入ったり、上手い具合にカット割りを入れたり、描写に陰影が富んでいたり、情感を湛えていたり……と、セックスの表現自体の魅力も大。自然な空気感も実に良く、例えば、射精を終えた瞬間に笑い出してしまうペアの描写なんて、実に楽しげで、しかもナチュラルなので、見ていて思わずこちらの頬も弛みます。
 そんな具合に、ハード・コア・セックスをダイレクトに見せるという意味では、確かにポルノ的ではあるんですが、それでも表現としては非ポルノ的といった感じで、ちょっと今までに見たことがないタイプ。セックスの内容がバニラなので、正直私は見ていてさほど興奮しませんでしたが、しかしそんな表現の魅力だけでも、充分以上に見る価値大なくらいに良かった。

 というわけで、全体のナチュラルな空気感や、セックス場面の魅力、そして不思議と爽やかな後味など、《今》のゲイ映画に興味がある方なら、まず見て損はない一本。
 しかしここまで赤裸々だと、例えゲイ映画祭であっても、日本での上映は難しそうではありますが……。

ちょっと宣伝、『奴隷調教合宿』第五話+対談(下村一喜さんと)掲載です

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 12月21日発売「バディ」2月号に、マンガ『奴隷調教合宿』第5話掲載です。
 前回がチェンジ・オブ・ペースの回だったので、今回はちょっと趣向が変化。とはいえ、若めのイケメン野球部員を責め凌辱しまくる、ガッツリSM系という基本ライン(笑)は変わらず。
 メンタル面での煩悶も加わり羞恥心責め指数がアップ、見せ場は「重いコンダラ」登場場面でしょうか(笑)。野球=巨人の星となるあたりが、我ながら古い(笑)。

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 さて、この「バディ」2月号ですが、連載マンガと共に、私の対談記事も載っております。
 お相手は、ファッション写真から音楽PVまで、幅広く活躍されている写真家の下村一善さん。カラー3ページ。ゲイ・カルチャーから互いのアートに対する考え方まで、いろいろと熱く語り合っております。
 下村さんは、この号の表紙およびメインのグラビアで、お笑い芸人のレイザーラモンHGさんのヌード写真も撮り下ろしておられまして、このグラビアが素晴らしい。下村さんの美に対するフィロソフィーを、先の対談で伺った後だと、尚更感じ入る美しさ。ぜひ実際にご確認あれ。併せて掲載されているレイザーラモンHGさんのインタビューも、実に好感度大です。

 これ以外にも個人的には、今号のグラビアは全般的に「当たり」という感じで、新宿二丁目プロレス×堂山プロレスの格闘ヌードグラビアSM風味は、かなりツボを突かれた感じですし(SM好きの海外の某有名写真家も、チラ見せしたらコーフンしておりました)、もう一つのお笑い芸人グラビア(チーモンチョーチュウ 菊池浩輔…って、浅学にして私は知らない方でしたが)のナチュラルな雰囲気や、ラッシュクルーズとのタイアップグラビアの和の感じで装飾的に作り込まれた雰囲気、そして前述の、オーセンティックかつスタイリッシュな下村グラビアや動のSMテイストなど、全体のバランスも実に良い感じ。
 というわけで、よろしかったら是非お買い求めくださいませ。

Badi (バディ) 2014年 02月号 [雑誌] Badi (バディ) 2014年 02月号 [雑誌]
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2013-12-21

“Beards: An Unshaved History”

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 ドイツBruno Gmünderから出版されたアートブック、”Beards: An Unshaved History”に作品を数点提供しました。
 古今東西の「ヒゲ文化」について、泰西名画からゲイポルノグラフィーまで豊富な図版を使いつつ、あれこれと論じた内容の本で、テキストは英独併記となっています。
 著者のケヴィン・クラークは、長くジャーナリストをやっていた人だそうで、新聞や雑誌の編集者や編集長の他、美術館のキュレーションを手掛けたり、ウィーンの大学でクィア・スタディーズを教えたりした人とのこと。2011年に出した”Porn: from Andy Warhol to X-Tube”がベストセラーになったそうです。
 内容は、大見出しとして「今日のヒゲ アウト&プライド」「70年代クローン・ルックの誕生」「ヒゲの歴史千年」「クローンの帰還」となっており、それに加えて更に「ヒゲ剃りの歴史」「ヒゲのあるクィアたち」「宗教とヒゲ」「オスカー・ワイルドのアンチヒゲ」だのといった様々なコラムが、いずれもたっぷりと図版を使って綴られています。

 私の提供した作品画像は「コミックスとヒゲ」の項で使用。こんな感じに参考図版的に、小さく数点載っております。
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 他のページは、例えばこんな感じ。左はイントロダクション部分の見開き、右は「ヒゲのあるクィアたち」の近現代編。
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 というわけで、古典名画やヴィンテージ写真から現代のファッション写真やゲイ・ポルノまで、ヒゲにまつわるありとあらゆる画像が収録されているので、ヒゲ好きならそれを見ているだけでもグッとくるはず。

 書籍のPR動画で全ページを繰っていく様子が見られますので(エロい部分にはボカシが入りますけど)、ご参考までにどうぞ。

 残念ながらいつものように、日本のアマゾンでは取り扱いなし。アメリカかイギリスのアマゾンで購入するのがオススメ。先頃出た拙著“Endless Game”と一緒に、如何ですか?

ドイツのゲイ雑誌”Männer”に記事掲載

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 ドイツのゲイ雑誌”Männer”の2013年12月号に記事が掲載されました。先日ベルリンでインタビュー取材を受けたアレです。
 雑誌自体は非ポルノグラフィー系の、カルチャー/ライフスタイル/情報誌といった趣。大判(A4強)のフルカラー誌で、紙質も印刷品質も上々。そこそこセクシーな写真とかも載ってますが、全体的な印象はファッション誌みたいな感じ。目次を見ると内訳は、特集/政治/ライフ/ボディー/カルチャー/情報/レギュラーコーナー…といったラインナップ。
 で、全てドイツ語なんで良く判らないんですけど、この号の特集は「フェティッシュ」で、スポーツギアをフィチャーしたメールヌードを撮る写真家の紹介や、レザーシーンの記事なんかに混じって、私の紹介記事も載っています。
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 二見開き4ページ。2ページ目に先日ベルリンでミーシャに撮られた写真がドバンと。雑誌自体の版型が大きいので、最初見たときちょっとビビった(笑)。雑誌の版元が、英語版”Endless Game”と同じBruno Gmünderなので、同作からのページあれこれが地紋的に散りばめられております。
 いちおうオンラインでの販売もありますので、出版社の該当ページリンクを貼っておきます。
http://www.brunogmuender.com/products/details/id/8605_MÄNNER_12_2013/

英語版単行本第二弾”Endless Game”発売です

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 拙英語版単行本第二弾”Endless Game”、12月上旬に発売です。
 版元はBruno Gmünder。ドイツを拠点にして全世界向けに英語その他の書籍をリリースしている、おそらくゲイ出版関係では世界最大手の会社。様々なメールヌード写真集や画集、海外作家のゲイ・コミック本の他にも、有名どころではゲイ向けトラベルガイド”Spartacus”なんかも出しているところで、ゲイ・アートに興味のある人だったら、一度ならずこの出版社の本は目にしていたり、手元にあったりするのでは。
 私はこれまで、同社のテーマ別アートブック等に作品を提供したことは何度もありましたが、単著のマンガ単行本としてはこれが初めて。話が動き出したタイミングから察して、おそらく春に出た”The Passion of Gengoroh Tagame”の好評が追い風になったのだと思いますが、表紙画像右下にBruno Gmünder Gay Mangaとあるように、この新レーベルを立ち上げて日本のゲイマンガの英語訳出版を継続していきたいと考えている模様。先日のベルリンでのミーティングでも、そこいらへんのことを色々と相談されました。
 収録作品は、2011〜12年にかけて「バディ」で連載した長編(168ページ)『エンドレス・ゲーム』一本。日本でもまだ単行本にはなっていないので、本としてのリリースは世界初ということになります。
 実は過去にもこういったことはありまして、たとえば『軍次』シリーズや『闘技場〜アリーナ』はフランス語版単行本の方が先ですし、その他の短編色々なんかも、日本で単行本が出るよりも先に、フランス語版やイタリア語版の作品集に収録された例があります。

 マンガ以外の収録コンテンツは、自作解説を兼ねた後書き(英語です)と、あと造本がちょっと変わっていまして、右の写真でお判りになると思うんですが、表紙と裏表紙が折り込み加工になっているので(フラップというんだそうです)、その部分にカラーイラストを4点収録。
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 マンガ本文の方も、雑誌掲載時の扉ページやロゴ用に空白にしていた部分に手を入れ、コマを描き足したりページ丸々描きおろしたり、仕上で満足がいかなかった部分に手を入れたり……といった、新規加筆修正作業をしております。まぁこれは、日本で単行本が出るときにも、多かれ少なかれ毎度そういう作業はしているんですが。
 版型は、B5(マンガ週刊誌サイズ)よりもちょっとだけ小さい、縦23.6×横16.8センチ。サイズが大きめな分、マンガもイラストも迫力倍増。
 書き文字の効果音に関しては、いつものように私の方から、欧文に置き換えるために取り払うことも、そのまま残すことも両方可能と提案。結果、先方さんの判断で、日本語の書き文字を残したまま、その上に欧文を小さめに入れるというスタイルになっています。
 日英翻訳を手掛けてくれたのは、”The Passion”と同じくアン・イシイ。既に良く知っている仲ですし、担当編集者のセミョンともベルリンで会ったのが功を奏して、東京とベルリンとニューヨークの三角形でメールをやりとりしながら作業。いやはや、便利な世の中になったもんです(笑)。
 そして海外版なので、もちろん無修正。下のサンプル画像は、ブログ掲載用にモザイク入れてありますが、実際の本はモロ見え。こういう感じで自分の作品が、海外でしか完全な形で発表できないというのは、毎度のことながら複雑な気持ちになりますね……。
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 入手方法は、残念ながら”The Passion”のときと違って、日本のアマゾンでは取り扱いがないので(Bruno Gmünderの本はいつもそうです……)、海外から直接個人輸入という形になるかと。
 とりあえず、アメリカとイギリスのアマゾンの商品リンクを貼っておきますので、よろしかったらご利用ください。

 具体的な発売日は、出版社がドイツに拠点を置き、それをワールドワイドにリリースという形のせいなのか、国によってまちまちで、さきほど確認したところ、いずこもまだステータスはプレオーダー状態でしたが、発売日に関してはエディター氏が「クリスマスに間に合うスケジュールにする」と言っていたので、じきに発売中に変わるのではないかと。
 ともあれ、初の英語版単行本出版から一年未満(約八ヶ月)という、嬉しいスピードでの第二弾発売となりました。
 第一弾”The Passion”が、版元やブックデザインや序文や解説等の面子などが、サブカルチャー/オルタナティブ・コミック寄りだったのに対して、この第二弾は王道のゲイ出版系というのも、個人的には良い感じの展開に感じております。
 よろしかったら是非お買い上げくださいませ!

バディ創刊20周年

Badi (バディ) 2014年 01月号 [雑誌] Badi (バディ) 2014年 01月号 [雑誌]
価格:¥ 1,700(税込)
発売日:2013-11-21

 ゲイ雑誌「バディ」2014年1月号、11月21日発売です。直販系のゲイショップ等では既に店頭に並んでいるはず。
 創刊20周年記念号ということで、いつもよりも増ページ、内容も充実したものになっています。歴代のカバーモデルさんやグラビアモデルさんたち75名登場ってのもスゴいし、90年代初頭から現在に至る日本のゲイ・コミュニティ&カルチャー史をコンパクトに綴った記事は、資料的な価値も大。
 様々なジャンルの様々な方々からのお祝いコメントも寄せられており、そこに混じって私も、お祝いコメント&ちょっとしたイラストを寄稿させていただいております。自分が同誌に描いた懐かしいキャラを、久々に描いてみました。
 ただし連載マンガ『奴隷調教合宿』は、先日お伝えしたように、今号では休載です。12月発売の2月号から、再びスタートいたしますので、しばしお待ちを。
 しかし創刊当初、高蔵大介さん、戎橋政造くん、上条毬男くんと一緒に編集部を訪ねたときから、もう20年も経ったのかと思うと、おめでたいという気持ちと同時に「もうそんなに経ったの??? 速! 怖!」という感じもしたり(笑)。
 ごく初期の号で、小倉東くん(マーガレットさん)たちと一緒に「SM特集」の企画に参加したのも懐かしいし、後に「ジーメン」を一緒に立ち上げることになるTさんや長谷川博さんと最初に出会ったのも、この「バディ」の編集部。
 印刷媒体には何かと厳しい状況が続く昨今ですが、末永く頑張っていただきたいです!

ベルリン紀行(2)

 10月11日。この日は昼にミーティングが一件入っているので、それまではフリー。
 ということで、楽しみにしていた美術館/博物館巡りに。因みにセミョンが、三日間有効のベルリンの美術館/博物館フリーパスをプレゼントしてくれて、さてどのタイミングで使おうかと考えた結果、仕事の案件が一段落するこの日から使うことに。

 というわけでバスに乗って博物館島(ムゼウムスインゼル。ベルリンの博物館/美術館が五つ集まっている観光スポット。ユネスコ世界遺産でもあり)に行き、一番手前にある旧博物館へ。古代ギリシャ・ローマ美術を堪能。
 ゲイ関係の書籍なんかで、一度は目にしたことのある方も多いのではないかと思う、アキレウスとパトロクロスを描いたギリシャの壷絵。
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 収蔵数がそれほど多くなく、人気の方もさほどないのか混み合ってもおらず、収蔵品1つ1つを落ち着いてじっくり見られる感じ。名品の誉れ高い『祈る少年』のブロンズ像は、流石の美しさ。
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 ちょと引っ込んだところに「愛の部屋」的な但し書きの付いた小部屋があり、入ってみるとエロティックなモチーフのものを集めたスペースでした。そんな中から、古代ギリシャ(おそらく)おちんこコレクション(笑)。
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 も一つ、サテュロス(多分)のゲイ乱交図。
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 他にも、大股開きの女性ヌードとか、ヘルマフロディテ(両性具有者)の美麗大理石像なんかもあり。
 そんなこんなをじっくり見ていたら、いつの間にか昼近くになったので、急いでミーティング場所へ移動。

 ミーティングの相手はベルリンのアート・ギャラリー。出版社Bruno Gmünderとは別件なんだけれど、互いにコネクションを作っておくと後々のためになるかも知れないと思い、セミョンも一緒に来て貰う。
 このギャラリーの件は、実は今年の頭にニューヨークのギャラリー経由で、春に個展ができないかという問い合わせを貰っていたもの。しかし今年の春は、既にトロントとニューヨーク行きが決定していて、しかもニューヨーク個展もあったので、ベルリンでやるのはちょっと無理と返事したところ、では秋にやってくれないかという話になり、しかし秋はパリ個展と重なるのでやっぱり無理、来年なら空いているよと返事したら、そのままになっていたもの。
 それが今回、ベルリン行きが決まった直後に再度連絡を貰い、来年の春でどうだというオファーだったので、だったら丁度いい、近々ベルリンに行くのでその時に一回会いましょうということになった次第。
 ギャラリー・オーナーはグザヴィエというフランス人。彼が最初に私のことを問い合わせたニューヨークのギャラリーや、事前にメールで貰っていたギャラリーの資料から予想していた通り、ゴリゴリのコンテンポラリー・アート系。床に奇っ怪な汚れのようなものがある……と思ったら、それも作品だった(笑)。
 というわけで、来年の春にそこで作品展示をする前提で、あれこれミーティング。
 こちらが、そのグザヴィエ氏。
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 ミーティングが終わった後、グザヴィエに「是非見ていくべき」と奨められた、絵画館(Gemäldegalerie)へ。博物館島とは別エリアにある、「13世紀から18世紀のヨーロッパ諸国の芸術品の収蔵では世界有数の美術館」(Wikipedia情報)だそうな。
 建物自体は、なんかどっかの公民館みたいな感じでしたが、コレクションはお見事の一言! 錚々たる古典絵画の名作群に、溜め息の連続。これ見逃してたら大後悔するとこだったわ……激推ししてくれたグザヴィエに感謝。
 しかし、あまりの充実度に見終わったらクタクタになった(笑)。夜はまたグザヴィエと約束があるので、それまでホテルで一休みすることにする。

 夜の10時、セミョンと一緒にグザヴィエが指定したミーティング場所へ。用件は、グザヴィエのところのフライヤー等をデザインしているデザイナーを紹介したいといので。
 で、ミーティングに指定する店だから、私はてっきりバーかクラブの類かと思っていたんですが……いざ店に入ったら、そこはセックスクラブ……つまりハッテン場でした(笑)。店の入り口で、デカいビニール袋を渡されて「店内で不要なものはこれに入れろ」っつーから、なるほどクローク代わりなのねと、ジャケットを脱いで詰めていたら、隣の人が靴だけ残してあとは全部袋に詰めて真っ裸になったもんだから、もうビックリ(笑)。
 横にいたセミョンに「……ひょっとしてここって、セックスクラブ???」と尋ねたら、「そうだよ」と涼しい顔。知ってたんなら事前に教えろよ!(笑)
 というわけで中に進むと、全裸の人やらパン1の人やら、レザー、レスリングのユニフォーム、ケツ割れ、Oバックなどの野郎ども(ドレスコードなしのフリースタイルの日だった模様)が、もうウジャウジャひしめいている。そんな中で、ともあれバーカウンターに辿り着いてコーラなんぞを飲んでいたら、グザヴィエが現れて(幸い、素っ裸とかじゃなくて、普通に黒T&レザーパンツとかでしたが)件のデザイナー氏に紹介(この人も普通に服を着ていた)され、「ないすとぅーみーちゅー」と握手。
 そして、向こうの方にある檻やらケツ掘りブランコやら、団子になってチュパチュパズコズコやってる野郎どもを尻目に、「で、今度のエクシビションは云々」と打ち合わせ。シュール過ぎる(笑)。
 何でもそこは、ベルリンでも有名な店なんだそうで、グザヴィエは是非それを私に見せたかったらしい。確かに、東欧時代の今は使われていない発電所の一角を改装した店で、淫靡でハードな雰囲気はバツグン。レディー・ガガが借り切ってパーティしたこともあるそうな(笑)。ここです。
 ミーティングを済ませた後は、店内をアレコレ見物。あぁ、楽しかった(笑)。
 セックスクラブを出た後は、同じ建物に今ベルリンで一番クールな巨大クラブがあるというので、入場待ちで並ぶ長蛇の列を尻目に、先刻紹介されたデザイナー氏の口利きで、フリーで中に入れて貰いました。
 使わなくなった発電所という、建物や内装自体のクールさもさることながら、とにかく音響が凄かった……。あんまり重低音がズンズンビリビリくるもんだから、お腹下しそうなくらい(笑)。

 翌12日は一日フリー。というわけで、また博物館島へ。
 まずペルガモン博物館へ行き、憧れのペルガモン大神殿やイシュタル門などを見物。
 トルコのベルガマ(ペルガモン)には行ったことがあるんだけど、そこで見られなかったヘレニズム時代の大神殿を、こうしてドイツで見ることができるというのは、なんかちょっと奇妙な感じはあります。また、これだけのものを丸ごと持ち帰るってのも、正直なところ大泥棒だよなぁ……なんて思いつつも、それでも素晴らしさを堪能。
 下の写真は、ミュージアム・ショップで買った、ペルガモン神殿の三翼のレリーフが全て収録されている、折り畳み式のカード。お好きな方ならマストという感じの、ナイスお土産品。お薦め。
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 こちらは、中庭にあったライオンと戦うヘラクレスのブロンズ像(確か近代の作品)。とてもセクシー。
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 続けて旧国立美術館へ。ドイツ絵画の豊富なコレクションが嬉しい。ただし、残念ながら一部改装中で、三階はほとんど見られず。
 アーノルド・ベックリンやカスパー・ダヴィッド・フリードリヒなんかの作品は、日本でもたまに企画展などで見られたりするけれど、古典主義の歴史画とかドイツの近代絵画とかは、あんまりそういう機会もないので貴重。
 現物を見られて嬉しかった、ロヴィス・コリントの強烈なサムソンの絵。
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 一目で気に入った、ハンス・フォン・マレー(?)という画家の『漕ぎ手』という絵。
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 前夜の帰りが遅く、起きたのが昼だったこともあり、この日の博物館/美術館巡りはここでタイムアップ。

 翌13日。午後にグザヴィエと、夜はセミョンとミーシャに会う約束があるので、それまでに残りの博物館/美術館を片付けることにする。
 またまた博物館島へ行き、まずは新博物館へ。収蔵品『ネフェルティティの胸像』が有名な、古代エジプト美術がメインの博物館。
 確かにネフェルティティは素晴らしかった。美しい上に、首の筋や目の皺の表現など、幾ら古代エジプト美術がリアリズムに接近したアマルナ様式のものだといっても、その表現は驚くほどモダン。特別扱いで個室に陳列されているのも納得。脇に、目の不自由な人のためのレプリカが展示されており、点字による解説と共に触って鑑賞することができるという配慮も、実に素晴らしい。
 とはいえ、このネフェルティティは飛び抜けて素晴らしいものの、他は正直あんまり……。カイロの国立考古学博物館と比較するのは酷としても、なんせ古代エジプト美術のコレクションって、ヨーロッパの博物館/美術館には腐るほどあるので(それだけ盗っ人的行為が多かったってことでもありますが)、それらと比較してもあまりアドバンテージは高くない感じ。
 でも、ハリネズミやカバの可愛い置物なんかは良かった。

 お次はボーデ博物館へ。実はここ、時間がなかったらスルーしても良いかな……と、最後にまわしていたんですけど、大間違いだった! ここ、すごい!
 内容は、中世キリスト教美術や小さな卓上彫刻などがメインの博物館なんですが、とにかく面白いものだらけ。そして異様なものも多い。ルネッサンス以前のキリスト教美術の異様さ、密室的な趣味性の高い小品彫刻の濃さ、そんなのが存分に堪能できる、ちょっと今までに見たことがないタイプのコレクションでした。
 というわけで、特に気になったものを幾つかピックアップ。まず、可動関節のあやしい雰囲気の金属製女性ヌード人形。陰毛までしっかり。
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 キリスト磔刑ジオラマ。
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 また別のキリスト磔刑ジオラマから、左右の盗賊たち。
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 縛られた老人(?)の卓上彫刻。
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 ニンフとサテュロス?
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 肩だけ可動関節になっている巨大キリスト像。
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 元来の造形に経年による破損が加わって、まるでコンテンポラリー・アートのようになっているキリスト像。
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 部屋丸ごとが悪魔崇拝みたいな一室の天井画。
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 卓上騎馬像の台座に繋がれていたヒゲマッチョ。
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 三メートル以上ありそうな、見上げるほどの大きさの巨大騎士(?)像。
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 ……きりがないので、ここいらへんにしておきます(笑)。
 ボーデ博物館、激オススメ。

 その後、グザヴィエとカフェで待ち合わせして、あれこれ打ち合わせ&世間話。次の週にパリに行く予定ありと言うので、私の個展をやっているギャラリー・オーナーのオリヴィエを紹介したり。
 グザヴィエと分かれた後は、今度はセミョンと待ち合わせ。待ち合わせ場所はBruno Gmünderがやっているゲイ・ブック・ストア。地下鉄(Uバーン)の駅(ノレンドルフプラッツ)のプラットホームから、レインボーの看板が見えるのですぐ判った。
 店内をちょっと見物してから、ミーシャの家に移動して写真撮影。前の記事で書いた、インタビューが載るゲイ雑誌MÄNNER用。
 その後、3人でレストランへ。これがベルリン滞在最後の夜。

 翌14日。午前中の飛行機でベルリンを発ち、パリで乗り継ぎ、翌15日に帰国。
 パリも楽しかったけど、ベルリンも良かったな〜……と思いつつ、今回の出稼ぎ旅行は終了。

2013年ベルリン紀行(1)

 10月8日、飛行機でパリからベルリンへ移動。
 なんでベルリンにも行くことになったかというと、同地に拠点を置いて、ゲイ・アート関係の書籍やゲイ・トラベル・ガイドなどを、全世界向けに出している出版社Bruno Gmünder(ゲイ・アート画集や写真集の洋書を買う習慣のある人間にはお馴染みの名前なはず)から、私の英語版単行本第二弾を、今年の12月上旬に出すことになっていたから。
 そのために春頃から担当エディター氏と、あれこれやりとりを続けていたんですが、「パリ個展でフランスに行くので、もし来られるようだったら来てね」と案内を出したところ、逆に「移動や宿泊の費用は持つから、ベルリンに来ない?」と誘われたので、あ、それもいいなとホクホク乗った次第。
 なにしろ私、ドイツに行ったのは30年くらい前に一度きりで、そのときはまだ《西ドイツ》だったし(笑)、しかもベルリンには行ったことがなかったので。

 ベルリンのテーゲル空港で、担当エディターのセミョン(Simeonなので、メールをやりとりしてたときはフツーにシメオンと読んでいたんですが、現地で聞いたらセミョンに近かった)がお出迎え。挨拶した後、バスと地下鉄を乗り継いで、まずホテルにチェックイン。
 ホテルの名前がAbba Hotelで、最初は「あのABBA」とは関係なく、単に綴りが同じで別の意味があるドイツ語か何かだろう……と思っていたら、1Fのレストランの名前が「アッバ・ミーア」だったので、どうやら本当に「あのABBA」だったみたい(笑)。いわゆるゲイ・ホテルではありませんが、LGBTフレンドリー・ホテルということで、ロビーにはベルリン・ゲイ・ガイドのフリーペーパーなんかが置いてあるし、全体の雰囲気はモダンを主体に程よくデコレーションが入った感じで、部屋は広いわ綺麗だわで実に快適な良いホテル。
 シャワーなんぞを浴びて、ちょっと休憩した後、セミョンの案内でベルリン観光へ。

 バスと地下鉄(っても地下から乗ったかと思いきや、途中から地上に出て高架になったり、また潜ったり、出たり入ったりするんですが)と市電をフルに駆使して、主だった名所旧跡エトセトラを次々と。ガイドブックに乗っている系の場所は、一通りこの一日でクリアしたんじゃなかろうか。おかげで、最後の頃はもうクタクタに(笑)。
 というわけで、ゲイ&レズビアン・ホロコースト・メモリアルで撮った写真が、こちら。
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 ここに限らず名所旧跡を巡っていると、どうしてもナチスや東西分断絡みのものが多いので、けっこうダウナーな気分になってきます。

 夜はセミョンに「チケットが一枚あまっているから」と誘われて、James Blakeのコンサートへ。
 音楽やパフォーマンス自体は良かったんですが、昼間の疲れでけっこう体力的にキツくなってきて、オマケに前座のDJも一時間以上あったり、ライトの演出がアグレッシブで目をやられたり、爆音&重低音で耳もやられたり……で、最後の方は正直「そろそろ終わってくれないかしらん」とか思ったり(笑)。

 翌9日は、夕方まではオフだったので、前日にあちこち見た中で、もっと良く見たかった所などへ行ってみることに。
 この写真は、戦禍で半壊したままの姿を残している、カイザー・ヴィルヘルム教会内部のモザイク画。すっごい綺麗。
2013Berlin_kaiser
 それからヘルムート・ニュートン財団写真美術館に行ったり、いろいろブラブラと。

 夕方になり、セミョンと待ち合わせて、ゲイバーのハッピーアワーへ。そこでBruno Gmünderの他のスタッフにも紹介される。
 下の写真は左から、同社が出しているゲイ雑誌MÄNNERの編集者クリスチャン(後日、彼からインタビュー取材を受ける)、私の担当編集者セミョン、名前忘れたけど同社のデザイナー氏、セミョンの上役ミーシャ。
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 バー自体は激混みで、景色もなかなか良かった(いい男もいっぱいいた、という意味)んですが、やはりオール出版関係者というのがネックなのか、ここだけ切り出すとなんかオタクっぽい感じ(笑)。
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 当然のことながら、私が加わってもそのオタクっぽさは全く変わらず(笑)。

 バーの後は、Bruno Gmünderのオフィスがその近くだと言うので、もう営業は終了していたけれども行ってみることに。
 セミョンとミーシャが、鍵を開けて電気を付けて、オフィス内を説明しながら案内してくれる。案内してくれる、と言ったとおり、広い。スタッフ(デスクの数)も多い。セクションも細かく分かれていて、日本のゲイ出版では考えられない規模。
 社員は40名くらいって言っていたかな?(ちょっとウロ覚え)全てゲイ男性のみだそうです。たまに女性社員も入るんだけど、長続きしないんですって。そんなものかしらん(笑)。

 翌10日。午後から前述のインタビュー&その他もろもろ打ち合わせなので、午前中はフリータイム。またあちこち見物に出掛ける。
 下の写真二点は、映画『ベルリン・天使の詩』でもお馴染みの、戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ)基部のレリーフ。バトルとキス。
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 余談ですが、初日にセミョンは私を案内しながら、「ここは『ラン・ローラ・ラン』に出てきた云々」「ここは『クリスチーネ・F』に云々」と、あれこれ説明してくれました。

 午後からはBruno Gmünderのオフィスに行って、まずMÄNNER誌のインタビュー。
 そんな予感はしていたんだけれど、インタビューの受け答えは全て英語。大丈夫かな〜と、自分でも不安だったけれど、質問の意味が分からなくなることも、自分の答えが伝わらなくなることもなく、何とかクリア。まぁどうせ、最終的にはドイツ語になるわけで、どんなメチャクチャな英語でも、そう大事にはなるまい(笑)。
 続けて、セミョンとミーシャと3人で、現在進行中の英語版単行本に関する諸確認やら、今後のアレコレについてミーティング。いろいろ興味深いプランも聞けたので、そのうち時が来たらまたお知らせできるかも。
 そこに同社CEO氏がやってきて、ご挨拶。私が同社の社名を「ブルーノ・グミュンダー」と言ったら、「アメリカ人とかは、その発音でいつもトラブルのに!」と喜ばれました(笑)。そのまま雑談していると、電子書籍の話題になり、洋の東西を問わずアダルトものの電子書籍には、同じ問題があることが判る。
 CEO氏から「うちの本は日本でも売られている?」と聞かれたので、正直に「残念ながら書店で見かけることはほとんどないし、アマゾンでも取り扱っていない」と答えたら、「やっぱりね〜」とガッカリされました。何でも以前は日本のディストリビューターと契約して配本もあったんだけれど、トラブルがあって以降(もちろん日本の性器の露出エトセトラに関する問題)ルートがない様子。
 同社としては、日本や東アジアのゲイ・マーケットも視野に入れたいのに、残念という感じでした。

 打ち合わせ諸々が終わったところで、私の単行本の本文レイアウト作業中のデザイナー氏に紹介されて挨拶したり、SNS用に写真を撮られたり。
 下の写真は、イタリアのアーティストFranzeの、まだ発売前の新作グラフィック・ノベル”Poseidon- T”を貰って喜ぶ私。
2013Berlin_PoseidonT
 内容は、ラグビーのスター選手に憧れるゲイ青年が、不意に起きたカタストロフに巻き込まれ、『クローバーフィールド』か『パシフィック・リム』かってな展開になるゲイ・ラブ・ストーリー。ゲイラブありハグありキスあり添い寝あり、セミヌードありフルヌードあり、触手あり巨大ロボットあり……だけどセックス場面なし! という異色作。
 しかもそれが最後には、身の丈サイズのリアルなゲイの心情やゲイ的なテーマを描いた作品として、綺麗に後味良く収束するという、なかなかのものでした。Franzeの前作(Andreと組んだ”Black Wade”)も、ゲイ版ヒストリカル・ハーレクインみたいな感じで良かったですが、テーマ性やユニークさという点は”Poseidon-T”に軍配。
 作者自ら作ったPVもあるので、よろしかったらご覧じろ。

 長くなったので、とりあえずここまで。