Painterによる油彩画風の厚塗り画
STEP 3〜下絵と背景
それでは、作成した資料をもとに下絵を描きます。
PC上で描くか、紙に描くか、結果はどちらも同じようにはなるのですが、どうもPCでドローイングするのは「楽しくない」(何ででしょうね、自分でも良く判らないんですが、紙の目に鉛筆をこすりつけながら線を描くというのは、自分にとっては思いのほか生理的な快感が伴う行為なのかも)ので、ここは古典的に紙に鉛筆で描くことにします。
手近なコピー用紙に鉛筆(製図用の芯ホルダーを愛用)で下絵を描いていきます。時にライトボックスを使ってトレスしたり、資料探しの段階でピックアップしておいた「参考になりそうな写真」と見比べたり。
下絵の線は完成作品では全く残らないので、あまりきれいに描く必要はないのですが、線がゴチャゴチャしたり汚れすぎていると、本描きの際に邪魔になるだけなので、なるべく少ない線でサクサク描くようにします。
出来上がったらスキャナーでPCに取り込み、Photoshopで紙白を飛ばしたり描線を締めたりといった調整をしたあと、印刷サイズに合わせて解像度を350dpiに調整、『下絵』という名前で保存します。
『下絵』をPainterで開き、まずそれを175dpiに変更して『下絵/175』という名前で保存。次にそのクローン画像を開き、いったん真っ黒に塗り潰します。そしてトレーシングペーパー機能のON/OFFを切り替えながら、元画像をガイドに<筆/ブリストル・キャプチャ>で大まかに背景を描き起こしていきます。どうして175dpiにしたかというと、石臼や石畳にラフなタッチを残して、荒い質感を出したいからです。
描画手順は、まず一番奥のモチーフから始めて、それが済んだら手前に移ります。この絵の場合は「右奥の石壁→木の柱→床→石臼の土台→石臼の輪→木の持ち手」という具合です。個々のモチーフは、まずシャドウから描き始めて、それから徐々に中間調、ハイライトという順番で立体を描き起こしていきます。
ディテールを描き込むのは次のステップに譲りますが、全体の明暗バランスはこの段階で決定するので、そこは納得がいくまでいじります。
また、レイトレーシングは物体の相互反射までは計算しないので(ラジオシティとかグローバル・イルミネーションとか、ちょっとあこがれちゃいますね)、レンダリングした資料画像の陰影はところどころ不自然な部分があります。今回の場合は、石臼の輪の側面下方が気になるので、そこは「見た目に自然」になるように考えながら描きます。
いい感じになったところで、いったん『背景/175』という名前で保存。
次にこの『背景/175』の解像度を350dpiに戻して、『背景』という名前で保存。そしてもう一度『下絵』(350dpiの線画です)を開き、『背景』のクローンソースを『下絵』に指定。こうして再びトレーシングペーパー機能のON/OFFを切り替えながら、細部を描き込んでいきます。メインの筆もさっきと同じ<筆/ブリストル・キャプチャ>で、描画の順番も同様に「奥→手前」「陰→明」です。
石臼が画面の半分以上を占めるので、これはかなりしっかり描き込んでおかないと画面がもたなくなりそうです。<拡大/縮小>を繰り返して、細部まで納得がいくまで描きます。言うなれば、175dpiの段階では「量感」を描き出す作業だったのに対して、今度はそれに「質感」を与えていく作業になります。
細部を描き進めるとともに、用途に合わせて筆も使い分けていきます。今回は、メインの<ブリストル・キャプチャ>以外に、木肌の部分にはカスタマイズした筆(<コントロール:不透明度→100%、荒さ→100%><サイズ:最小サイズ→13%、%サイズ→5%><表現設定:サイズ→筆圧、にじみ→筆圧+反転><塗料:補充量→25%、にじみ→60%><一般:描点→円形、ストローク→シングル、手法→塗りつぶし、バリエーション→塗りつぶし+ソフト+テクスチャ>)を、石臼に付着したグレインの表現には<エアブラシ/荒毛スプレー>を、それぞれ使いました。
手前のバー以外は一通り全て描き込んだ時点で、とりあえず『背景』は完成です。バーを残したのは、その奥に人物が重なっているので、要領良く描くには「人物の胴体→バー→人物の手」という順番がいいからです。
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